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Game*Sparkレビュー:『FINAL FANTASY VII REBIRTH』ー魔晄エネルギーがもたらす喜びと痛みを、「今」の視点から描き直す

時代を超えるために、避けては通れない道へ踏み込む勇気。

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Game*Sparkレビュー:『FINAL FANTASY VII REBIRTH』ー魔晄エネルギーがもたらす喜びと痛みを、「今」の視点から描き直す
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Game*Sparkでは、全7本の『FINAL FANTASY VII REBIRTH』レビューを掲載します。
いずれの記事もネタバレを含むため、閲覧の際には留意してください。


「そんな旅じゃねえだろうが、これは」

ゴールドソーサーへ向かうロープウェーの中、はしゃぐユフィたちにバレットはこう言いました。ジュノン、コスタ・デル・ソル、そしてゴールドソーサー。どれも神羅カンパニーが関わっている上、娯楽のために大量の魔晄エネルギーを消費している。そのことは全員分かっているものの、それでも心を奪われずにはいられない。コレルやアンダーソーサーの苦境を目にしながら、それを踏み台にした華やかなエンターテインメントに興ずることは罪なのだろうか?

「破」のパートだから許される何でもありのお気楽道中

『FINAL FANTASY VII REBIRTH』(以下、『FF7 リバース』)は『リメイク』に続く三部作の2作目で、クラウド達はミッドガルを飛び出し広い世界の旅を続けます。爆破ミッション、プレート落下、エアリスの謎といったダイナミックな展開が続いた前作に比べて、『リバース』では「セフィロスを追う」という漠然とした目的以外は示されず、神羅も様子見していて追い立てられることも少ないです。ゆっくりと観光する余裕すらある、切迫感の少ない展開が続きます。

『リメイク』ではクラウドとアバランチ、エアリス、レッドXIIIがどのようにして出会い、神羅との戦いでどのように絆を結んでいったかが描かれました。対して、『リバース』の方では完成したパーティーの関係性が変わることはなく、出くわすバラエティ豊かなイベントに対して彼らがどうリアクションするか、というところに進行の軸を置いています。

例えるなら「名探偵コナン」では大枠の“黒の組織”の物語があるものの、そちらの進行はとてもゆっくりで、毎度毎度起きる事件は単発です。それを子どもの立場を利用してどのように解決するかを読者は楽しみます。工藤新一に戻ってしまったらそれが不可能になってしまうので、単純に大目的を進めるのがよいとは限りません。

オープンワールドとしてなんでもありのイベントを詰め込むには、物語が大きく動かない「ゆるいシチュエーション」が長く続くのが最適です。物語を畳むのは第3作の役割なので、中盤の『リバース』はそれまでのモラトリアム、つまり『FF15』の前半のように、漫遊の旅の中でクラウド君達が様々な無茶振りをなんでも屋としてクリアしていくのを楽しむパートなのです。

これはクラウドの持つ独特なキャラクターによるところが大きいでしょう。「どんなときも冷静沈着」「任務とあらば忠実に何でもこなす」「無駄にかっこつける」、いわゆる○二○の典型と揶揄されがちで、コラボ先のゲームでもいじられることが多いですが、改めて本家が大真面目にやるとこの上なくファニーな場面ができあがります。

頭にモーグリのポンポンがついても、レッドが急に○○○ルをかましても、レイをかけて花柄ウィリーで爆走しても、常に涼しい顔を崩さないというだけで面白い。こういった「はっちゃけ」ができるかは作品の雰囲気とキャラクター次第なので、『FF16』のように徹頭徹尾シリアスな作品ではもちろん不可能です。ディオ園長のような濃厚キャラをぶつけても絶対にブレないクラウドだからこそ、彼ならきっとなんとかしてくれるだろうという全幅の信頼を持てているのです。さすがにセフィロスどんぎつねには負けてしまいましたが。神羅魂社員など人気キャラクターもなんだかんだで続投し、さながら個性の殴り合い状態で物語は進んでいきます。

このキャラクター主導の進行スタイルは、ちょっとした好みや過去話など人物像の掘り下げに向いています。悪役が企みを仕掛けてくるといったイベントが向こうからやってくる受動的な話が多くなりますが、そのリアクションの中で時折こぼれてくる好き嫌いや過去の思い出を集めることで、よりキャラクターを好きになっていきます。心情的な変化も少ないのでエピソードの前後は関係なく、自由な進め方ができるオープンワールドとは相性がいいのです。あとは、積極的に寄り道に誘うエアリスとユフィのおかげでしょうか。使命に押し潰されそうになっていると楽しめるものも楽しめませんからね。

オープンワールドの自由を満喫するには、目的から大きく逸れても「まあいっか」で許せる雰囲気が大事です。急かさないマイペースな旅を物語上で壊さないからこそ、寄り道できるお気楽さが続き、その合間で交わされる何気ない会話からキャラクターの意外な一面が滲み出るのです。様々な人たちとの出会いと別れ、帰郷によってじっくりと明かされるそれぞれの過去、そして、いなくなってしまった人たちの思い出を語る。RPGの物語で感じたかった「旅情」をうまく見せることに成功していると思います。

ゲーム音楽のリミットブレイク

そんな楽しげな雰囲気作りに大きく寄与しているのが、ジャズ&ポップスを主軸に凝りに凝った音楽の数々です。前作『リメイク』、『FF16』と同様に登場人物と旋律をリンクさせるライトモチーフの手法を用いて、あらゆる場面で印象的なメロディと驚きだらけのアレンジが用意されていました。ゴールドソーサーでティファと2人で行動するときにだけフレーズが交互に流れる曲があるなど、そんなところにまで専用曲が、と耳が幸せな時間がエンドレスかつシームレスに続きます。チョコボのテーマは毎度の恒例ですが、今作ではエリアごとの違いとミニゲーム関係、イベント用で20バージョンぐらいはありそうです。ゲームの退屈さは単調な繰り返しによって起きますが、音楽が気に入ればそんな退屈も吹き飛ばしてくれるでしょう。

中でもお気に入りなのが「ケットシーのテーマ」のバトルアレンジ。決して使う場面は多くないにもかかわらず、ビッグバンドの大編成でスパイ映画のようなスリリングな曲調に仕上がっています。音楽の予算に∞とでも書いてあるんちゃいます?と思ってしまうほど(今もそのためにシミュレーターを起動して書いてます)。小さなサプライズとして『FF10』の「祈りの歌」が隠されていたことに気づきましたか? 1フレーズから意味が広がる、ライトモチーフならではの仕掛けを探してみてください。

本作における音楽の理念が垣間見られるのが、カームの街角で聞こえてくるシンラレコード所属の歌手アキラのミニライブです。凱旋記念と言うことでMCも入っているのですが、ちゃんと歌っている歌謡ポップスが3曲もかかって、1ループ10分ほどの超長尺が用意されていました。こういうものを全部聴く物好きはそう多くないので、普通は1曲あれば十分です。戦闘曲もフィールド曲のアレンジ切り替えなら他のタイトルでもありますが、各キャラクター専用、忠犬スタンプなどイベント曲にまでペアとなる戦闘曲がつけられます。どこでも使い回す汎用戦闘曲というものがない、むしろすべて専用曲でできていると言っても過言ではありません。

音楽面で最大の目玉はもちろん、野島一成作詞・植松伸夫作曲のゴールデンコンビによる書き下ろしテーマソング「No Promises to Keep」です。『FF8』以降恒例になったテーマソングはJ-POP史にも足跡を残し、「Eyes on Me」「素敵だね」などは今もなお愛されています。

『FF10-2』ではユウナの歌唱として物語を動かす役割を担っていて、『リバース』で『FF7』にもそういうシーンができただけでも、フルリメイクの意義はあったと思います。2011年の「ゼロ」「約束の場所」を最後に途絶えていたシングル盤も今回復活して、「Eyes on me」のような曲を『FF7』にもつけたいということなのでしょう。

ゲーム音楽は50時間、100時間の長いプレイ時間の中で、かける音楽は連続ドラマと同様にあらかじめ用意した雰囲気に合わせた曲を割り振っていく形をとっています。しかし『リメイク』『リバース』では場面に合わせて曲を作る映画的な作り方を選択しています。使い回しはできませんからその分制作コストはかかりますし、そこまで凝る必要があるかと問われれば、やはりおいそれと手は出せないやり方です。

それでも『リバース』ではあえて挑戦し、文字通りゲーム音楽の限界突破を実行しました。総計時間8時間超えとなれば、もはやワーグナーの楽劇にも匹敵する規模。『リメイク』では2020年度のTGA「Best Score and Music」部門を受賞しているだけに、『リバース』も同部門を獲得する見込みは十分あります。

ゲーム的な部分ももちろん大事ですけれど、そのプレイに合わせてどんな音楽を聴けるのか、どんな驚きの映像を見せてくれるのか、個性豊かなキャラクターをどう描くのか、そうした演出部分に「FFらしさ」があると思います。名曲が揺さぶる感情の波が、生まれ変わった数々の名シーンをドラマチックに盛り上げ、映像と音、プレイが一体になる『ファイナルファンタジー』でしか味わえない感動を与えてくれるのです。近年のゲーム音楽はハリウッド映画の影響かはっきりとした主旋律を作らず、主となる映像よりも控えめなものが多いですが、音楽が力強く作品世界を引っ張っていく、そういうスタイルも残っていくべきですし『FF』は今後も崩さずに続けていってほしいですね。

「今」のリアルで補完しなければならないこと

遊びあり笑いありのクラウド一行お気楽道中ですが、いまいちバレットは観光気分に乗り切れない様子。コスタ・デル・ソルでも寄り道せずさっさと進めと言い、ゴールドソーサー手前のコレルでバレットの苦い過去がついに明かされます。

クラウド達が目にした爆発した魔晄炉は、かつてバレットが村のためにと建設に賛成したものでした。魔晄炉が何を表しているか、東日本大震災を目撃あるいは経験した私達には、言うまでもありません。意見の違いで町民が対立する様子など生々しさも感じます。水を溜めた瓦礫だらけの魔晄炉からは、あの光景を連想せずにはいられないでしょう。

他とは打って変わってバレット関係の場面は雰囲気が大きく変わって重たい空気に包まれています。原作に比べてディオ園長の対応がマイルドになっただけに、ダインの狂気が一層クローズアップされました。家族を殺された復讐に重役を狙った銃撃事件でも、はっきりと従業員が巻き込まれているのが確認でき、デフォルメからリアルに変わった故に描かれる「殺し」にはドキリとさせられました。避難誘導の情報を伏せたアナウンスや逃げていく群衆で、現実のテロ事件を想起させる場面になっています。

また、バレットはゴーストホテルの演出にこう言い放ちました。

「こんな子供騙しのために、どんだけ魔晄を使ってんだよ!」

村を壊されたのは実用性のない娯楽に使われるためだったのか。コレル村のことを思えばバレットがそう怒るのも無理はありません。メタ的なことを言うなら、ゲームで電力を使っている私達にも当てはまることで、ゲーム作品の台詞としても大きな矛盾を抱えていますが、今の視点から魔晄エネルギーを考える上ではとても大きな問いかけです。私達自身もまた神羅カンパニーであり、ゴールドソーサーの客達なのです。

クレイジーなほどに気分を盛り上げる甘いイベント群の中に、ワンポイントで重いテーマを入れることで、その苦々しさは一層引き立ちます。多くの人が目にするビッグタイトルでこれらのセンシティブなところに触れるのは難しいでしょう。新規の作品ならやらないような場面も、『FF7』の物語を大きく動かすシーンである以上避けては通れません。そこを変えずに今の私達に「刺さる」描き方にしたのは良かったと思います。「なにも終わっちゃいねえだろうが!」というダインの叫びは間違いなく本作のハイライトです。

時代を経て物語をやり直すとき、必ずその時々で忌避される描写、いわゆる「不適切」な部分がどうしても出てきます。『リバース』ではある程度の変更はあるものの、重要な場面ではしっかりとテーマを見据え、今だからこそ見えてきたものを表現しました。もちろんそうした要素が万人に受け入れられるわけではありません。それでも、痛い部分をきちんと刺しにいく物語は強く印象に残り、後に振り返っても鮮明に思い出させてくれます。そこにこそ「伝説」になる条件があるのではないでしょうか。

総合評価:10/10

良い点
・キャラクターの深掘りで新たな一面を数多く見ることができる
・バラエティ豊かなイベントで仲間との楽しい旅体験を実現できている
・極上の映像演出と常に新鮮な楽曲群。これこそ『FF』の醍醐味

悪い点
なし。総合エンターテインメントとして全ての瞬間に心が動く

《Skollfang》

好奇心と探究心 Skollfang

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