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Game*Sparkレビュー:『Rise of the Ronin』―「幕末史の面白さ」に気付けた国産オープンワールドACT

待望の幕末オープンワールドの実力はいかほどか。

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Game*Sparkレビュー:『RISE OF THE RONIN』―「幕末史の面白さ」に気付けた国産オープンワールドACT
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※本記事はネタバレを含むため、閲覧の際には留意してください。

日本史を題材にしていたり、侍や忍者が登場したりするアクションゲームは数多くリリースされてきました。筆者としては、PlayStation 2時代の『侍(侍道)』シリーズや『剣豪』シリーズ、『風雲 新撰組』『風雲 幕末伝』などは子どもの頃によく遊び、今でも強く記憶に残っています。

また近年でも、かつてより発売されるペースは減っているような印象はありますが、『龍が如く 見参!』『維新!』や『SEKIRO』『Ghost of Tsushima』、またTeam NINJAの『仁王』シリーズなど、時折発売されてはゲーマーの間で注目を集めています。

まず結論から述べますが、筆者は本作『Rise of the Ronin』を非常に気に入りました。近年の日本史ゲームの中はかなり変わった、それこそPS2期を思わせる歴史ゲームの決定版のような作品だとも感じます。荒い部分、不満が残る部分というのもなくはないですし、「完璧な作品」であるとは言いませんが、欠点を補ってあまりある魅力と、面白さのある作品です。ということで、ここからのレビューでは主に本作の気に入った点を紹介していきましょう。

良い感じに再現された横浜/江戸/京のオープンワールドや史跡

本作では横浜/江戸/京という大都市を中心とした、ちょっとしたオープンワールドのようなものが3つあります。そのうち横浜エリアと江戸エリアはなかなかの広さで、それぞれデフォルメされてはいますが、歴史的な建造物などはちょうどいい感じに表現されており、うろついていて楽しい出来です。

筆者は現在東京に在住していて、大学時代は京都に住んでいたため、ゲーム内都市のうち2つに結構な土地勘があり、「ああ、確かにこんな感じかも」と思える点も多く、知的好奇心が刺激されました。日本史に特別詳しいわけではないため、再現度がどの程度高いかどうかは正確なことはわからないですが、知っている建造物が登場することもあり、少なくとも「トンデモ」だとは思わなかったです。いずれも説得力がありました。

特に「江戸」のオープンワールド化はありそうでなかったもので、多くのゲーマーが待望していたものなのではないでしょうか。というか、少なくとも自分の記憶の中には、江戸という都市がこれほどの自由度/広さで取り扱われているゲームは存在しないので、おそらくかなり珍しいのだと思います。

もちろん、幕末の横浜が再現されているゲームも他に知らないわけですが、江戸時代は日本史の中でも人気のある時代であり、「江戸」は控えめに言ってもかなり有名な土地であるため、描いている作品がここまで少ないのはちょっと意外な感じもしますよね。本作の最大の魅力は、人気があるのにもかかわらず今までオープンワールドゲームであまり描かれてこなかった「横浜」「江戸」「京」という都市がゲーム内に登場することそのものだと思いますし、これは非常に意義があることでしょう。

マップの中には「猫」を始めとする様々な達成目標が散りばめられており、アイテム収集や金策など、ただ歩き回っているだけでも有意義です。実際、筆者はミッションをまったく進めずマップをただ漫然と歩き回っていた時間がプレイ時間のほとんどを占めていたように感じます。

ファストトラベルや馬、グライダー的な「アビキル」など移動手段が充実していて、キャラクターを動かしているだけで楽しいです。このあたりはよくあるオープンワールドゲームの形質といった感じではあって、斬新だったり新鮮だったりはしないのですが、手堅い魅力になっています。

その他、ミッション用マップとしていくつか有名な場所が出てきました。例えば「清水寺」は、その象徴でもある「清水の舞台」の足場を鉤縄を使い飛び回ることができて、面白さと知的好奇心両方が満たされる楽しいマップになっていました。京の街は『龍が如く 維新!』でも再現されており、そこにも清水寺はボス戦の舞台として登場するのですが、本作のほうがアクションの自由度が高いため、楽しさも増していました。

適度に爽快で適度に緊張感のある戦闘/アクションシステム

本作のもうひとつの特徴が、緊張感の高いアクションシステムです。戦闘はスタミナのようなものである「気力」を管理し、相手の気力を削ることで「追い打ち」という大ダメージ攻撃をうまく当てていく……というようなもので、特に「石火」と呼ばれる他のゲームでいうところのパリィ/弾きのようなものが重要になっています。

気力ゲージがないとピンチに陥る反面、相手の気力を削りきったほうがいい場面もあったりして、攻防が一体になったなかなか面白いシステムですが、ここも「斬新」というよりは割とどっかでやったことがある感じではあります。しかし主人公はキビキビと動きますし、爽快感はかなり高いため、あまり不満はありません。

筆者にとってはTeam NINJAの前作である『Wo Long: Fallen Dynasty』や『仁王』シリーズはちょっと難しすぎるためあまり遊んでこなかったのですが、本作には難度選択もあり、アクションゲームが苦手でも安心してプレイすることができます。

ちなみに最低難度の「薄明」であってもまったく「ヌルゲー」という感じではなく、適度な歯ごたえがあります。筆者の腕前ですと、何も出来ず負けてしまうことがある反面、前述の通り攻防一体になった「石火」がうまく決まるとあっさり敵を倒せる場面も多く「圧勝するか負けるか」というようなピーキーなバランスだとも感じました。

もちろんコソコソ隠れながら一人ずつ暗殺していくようなプレイングも可能。ボス戦などはどのみち正面切って戦闘することになりますが、ある程度は遊び方の自由度も確保されています。

主武器は刀や薙刀だけでなく槍やサーベル、銃剣など豊富な種類の中から選択でき、銃や火炎放射器のような副武器も登場します。武器ごとに3つセットできる「流派」というものもあったりするので、戦闘方法はかなり多岐にわたります。

先頭のスタイルは様々なものを試してみても面白いでしょうし、やや複雑だと感じる場合は手に入れた武器の中で最良のものを使い続け、流派の相性だけを気にしていても大丈夫です。というか戦闘の要素はかなり複雑で、筆者自身クリアした今でもまったくすべてを把握しきれていません。

魅力的なキャラクター/ロマンス

本作は幕末が舞台であるため、新撰組の面々や坂本龍馬など、現代においても人気のある歴史上の人物がキャラクターとして登場します。

特に龍馬は主人公とバディ化していくこともあり、非常に魅力的な人物として描写されます。ほか、高杉晋作や徳川慶喜、勝海舟など人気のある人物は、おおむね好人物として描写されていました。反面、久坂玄瑞や井伊直弼などは(史実もあるので仕方がないと言えますが)やや損な役回りかなとも感じました。

本作で一番驚いたのが、史実人物とロマンスができるという点です。あの「篤姫」ともロマンスが可能な点など、ちょっと「いいのかこれ!?!?」という感じもするのですが、世の中では信長が女体化しているような作品もあるので、まあ、多分問題ないのだと思います。ロマンスは筆者がプレイしたCERO D版ではかなりあっさり目に描かれていますが、キャラクターの掘り下げにもなっているので、嬉しい要素ではあります。

仲良くなったキャラクターは自宅である長屋に訪ねてきてくれます。結果として、軒先でくつろぐペリーというような異常な光景を目にすることができ、かなり変です。このあたりの異質さ、面白さはPS2期の歴史ゲームを強く想起させられました。筆者はちょろいので、こういう要素がひとつあるだけで「このゲーム、好きかも」と感じてしまいます。

ストーリー

最後に、ちょっとだけストーリーについても述べていきます。ここからは物語のネタバレも若干含まれるため、改めてご留意ください。

本作においてプレイヤーは「隠し刀」と呼ばれる暗殺者として、さまざまな形で歴史に干渉しながらも生き別れた「片割れ」(相棒のようなもの)の足跡を辿っていくことになります。

ストーリーには「佐幕」か「倒幕」かでいくつか分岐するポイントがあります。しかし、どちらに加担したところでそれほど大きく正史を逸脱することはなく“IF歴史もの”としてはかなり控えめです。

筆者はIF歴史ルートが好きなので、物語の序盤中盤を佐幕派として進めました。途中では新選組に協力し坂本龍馬と共に池田屋事件に参加するという筆者好みのトンデモ展開もあったのですが、それ以上掘り下げられることはなく、ややムリのある流れで結局半強制的に倒幕勢力に力を貸す流れとなってしまいました。

このあたりにはかなり違和感があったので、こうなるぐらいならいっそ最初から正史ルートだけでもいいのでは……?と思いました。ストーリーも序盤中盤に比べ京都以降はかなりダイジェスト気味になるので納得度が低いです。ダウンロードコンテンツや完全版などで更に作り込まれたモノをプレイできるなら、今後に期待したいとも思います。

ただ、クリア後に分岐などまで遡ってやり直せるシステムはかなり秀逸で、ストレスを感じるような周回プレイを強いられずに済む点は好印象です。ちゃんとやり込めばちょっと嬉しい“とあるIF要素”もあるところもよかったです。

総評

『Rise of the Ronin』は面白いゲームです。システムに斬新な点は少なく、やや要素が散らばって雑多な印象も受けますが、それはそういうものとして面白いですし、そういった欠点を補ってあまりある魅力を多数揃えています。江戸や横浜のオープンワールドは歩き回っていて楽しいですし、史実人物とロマンスできたり、仲良くなったりできる要素は良い意味で“変”でおかしいです。

しかしなにより、本作をプレイして良かったと思えることとして「幕末史の面白さ」そのものに気づけたという点が挙げられます。筆者は本作を遊びながら、分からないことがあったらその都度ググってWikipediaで軽く勉強したりもしました。そういう知的好奇心をくすぐられるような体験として、本作をプレイしたことは強く記憶に残りました。

個人的な好みとしてはもっと分岐が激しく、IF歴史に突入していくようなものが好きだったりもするのですが、本作が評判を呼べばいつかそういう作品が作られる日が来るかもしれないので、筆者は本作を多くの人にオススメしたいと思っています。

直近一ヶ月ほどの間で、ゲームライターとして“国産のオープンワールドアクションRPG”と呼べる作品をいくつか触ったのですが、個人的にはその中でベストに気に入った作品になりました。

総評:★★★

良い点
・歩いているだけで楽しい「横浜」「江戸」「京」のオープンワールド
・爽快で楽しい戦闘
・魅力的に描かれた歴史的な人物、ロマンス

悪い点
・複雑でやや全貌を把握しづらいシステム
・もうちょっとIF歴史を楽しませてほしかった




ライター:文章書く彦,編集:キーボード打海

編集/「キーボードうつみ」と読みます キーボード打海

Game*Spark編集長。『サイバーパンク2077 コレクターズエディション』を持っていることが唯一の自慢で、黄色くて鬼バカでかい紙の箱に圧迫されながら日々を過ごしている。好きなゲームは『絢爛舞踏祭』。

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