気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Hollow Tree Games開発、海外ニンテンドースイッチ/PS4/Xbox One/PC向けに6月6日リリースされた幻想アドベンチャー『Shape of the World』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、移り変わる世界を彷徨う幻想アドベンチャー。歩くごとに異なる顔を見せる森や洞窟を自分のペースで旅することができます。浅い池から顔を出す大きな首長竜、空を漂うクジラなど、動物も特徴的です。また、モノリスや植物に接触することで世界が有機的に変化し、新しい道を見つけることもできるのだそう。日本語にも対応しています。
『Shape of the World』は1,320円で配信中。
――まずは自己紹介をお願いします。
Stu:『Shape of the World』のクリエイターです。本作は、私のすべての自由時間と情熱を費やした4年間に渡るプロジェクトでした。私は昼間、AAAタイトルの開発に携わっているVFXアーティストで、現在は『Gears of War 5』に携わっています。以前は、美術学校でグラフィックデザイン、動画、彫刻を勉強していました。自分の時間があるときには、一日中仕事をして疲れた後にプレイしたいような、リラックスできるゲームを開発してきました。私はカナダの水と山に囲まれたとても美しい街、バンクーバーに住んでいます。スタンレーパークや太平洋岸北西部を散策しながら、ゆったりした気分で探索できるゲームを作ってみたいと思ったのです。スタンレーパークはダウンタウンのすぐ隣に位置したとても大きく古い森で、迷路のように道が入り組んでいます。私は大好きな音楽をヘッドフォンで聞きながら、自転車で走っていました。感情を沸き立たせるエレクトロニックミュージックとともに、森の中を走り抜けることが大好きだったのです。しかし私は、道に迷うこと自体も好きだということに気づきました。自分がどこにいるのか分からないと簡単に迷子になってしまいますが、進み続ければ道は必ず見つかります。そんな感覚をゲームで表現したかったのです。
――本作はどのようにして開発が始まったのでしょうか?
Stu:丁度、私にはUnrealエディタの十分な経験があり、ユニークな探検ゲームのプロトタイプを作り始めることには自信を持っていました。そのアイデアとは、ミニマル・アートとグラフィカルな世界の中を歩きながら、目の前に広がる世界いっぱいに木々が生い茂り、あなたの動きが命を吹き込むようなものでした。クリーチャー達は突然現れ、あなたの周りを走り回ったり飛び回ったりします。重要な点は、目の前にたくさんの色があふれ返っているということで、それはディテールやリアリズムではなく、素晴らしい形と色のコンビネーションが人々の心を惹きつけるグラフィカルな光景なのです。私はVFXアーティストとして、これをユニークな形でお届けできると思いました。そしてその経験を生かし、幻想的で命に溢れたものを作り出したのです。
実際にプレイできる世界を完成させるのには少し時間がかかりましたが、作り方を学んでいる間にアートスタイルを確立するためのコンセプトアートを描くことができました。プロトタイプをいくつか作った後、プログラムとアートを一つにすることができ、プレイヤーが探索しながら世界と交流することに魅力を感じられるようなシンプルなデザインのものを採用することになりました。このデモは2015年のE3で披露することができ、おかげで本作完成の為、Kickstarterを通じて資金を集めることができるようになりました。Kickstarterは成功し、よき友達であったBrent Silkを作曲とサウンドデザインのため雇いました。他の何人かの業界の友人たちが、3Dモデリング、テクニカル・アニメーション、そして様々な業務を手伝ってくれましたこともあり、私の夢のゲームを完成させることができたのです。私の望んだとおり、幻想的で、鮮やかな色彩で、音楽性があり、プレイヤーが迷ってしまうことが楽しくなるようなゲームになりました。
――本作が影響を受けた作品はありますか?
Stu:『Shape of the World』に大きな影響を与えたゲームがいくつかあります。『Flowery』は、家庭用ゲームをあまりプレイしたことがない人たちに私がいつも見せていたゲームです。それを見た人たちは、そのシンプルかつ非暴力的な美しさに衝撃を受けていました。私は、ゲームで何ができるのか、プレイヤーに気づかせることが大好きです。そして、私は個人で開発され、短いプレイ時間でもとても満足のいく体験をすることができる『Proteus』を見つけました。敵や時間制限はありません。それでも、鳥肌が立つような体験ができるのです。『風ノ旅ビト』も私の心を揺さぶりました。本作がリリースされる前に、美しい日本のゲーム『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の中での素晴らしい探検を見られて嬉しかったです。あの様によく考えて作られたデザインは、私の想像力を刺激し、本作のプレイヤーの動きに最後の仕上げをすることとなりました。例えば、走るボタンを追加する代わりに、プレーヤーは木を破壊することで少し前に進むことができます。
視覚的な面では、私は日本が得意とするような商業アニメーションやディズニーのHans Bacher氏によるミニマリスト的な美しさが好きです。これらから影響を受け、「ノーテクスチャー、ノーライト!」という方針であったり、素材においてシンプルな計算を使用し色彩や雰囲気を掘り下げることに繋がって行きました。本作において、どのオブジェクトにも特定の色をつけていません。その代わり、コードが埋め込まれています。風景に色を付けたい時、私はそれぞれのコードに色を割り当て、いつでも他のどんなカラーパレットとも切り替えられるカラーパレットファイルの中にそれらを保存しました。こうして、プレーヤーがいつでも何かしら大事なものを発見するシーンで、パレット全体を即座に変更する「魔法」が生まれたのです。さらに、色の変化とともに木々やクリーチャーがスポーンします。こうして、生態系を変えると共に、あなたが自分だけの世界を創り出していると感じ、探検するのが楽しくなります。また、プレイヤーは種を見つけて周りにまいたり、クリーチャーに向かって投げつけ、どんな反応をするか見ることもできるでしょう。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Stu:日本のゲーマーの皆さんに、『Shape of the World』のゆったりとした美しさを堪能していただけたら嬉しいです。プレイ時間は1~3時間ほどなので、何年も迷い続けてしまうかもしれない他のゲームとは異なり、忙しい日常の中における短時間の癒しになるでしょう。太平洋岸北西部からインスパイアされたエキゾチックな世界の中で、楽しく迷子になる喜びを見つけていただけると幸いです。
――ありがとうございました。
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