ゲームと音楽、世界観すべてが一体化した作品を作っていきたい―独特の世界作り続ける、チェコの開発者『Machinarium』『Samorost』開発スタジオAmanita Design創設者が語る【インタビュー】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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ゲームと音楽、世界観すべてが一体化した作品を作っていきたい―独特の世界作り続ける、チェコの開発者『Machinarium』『Samorost』開発スタジオAmanita Design創設者が語る【インタビュー】

『Samorost』『Machinarium』など多くの印象的な作品を生み出すチェコの開発スタジオ。その制作や想いについてお聞きしました。

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ゲームと音楽、世界観すべてが一体化した作品を作っていきたい―独特の世界作り続ける、チェコの開発者『Machinarium』『Samorost』開発スタジオAmanita Design創設者が語る【インタビュー】
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ヨーロッパのチェコ共和国。ともすればゲーマーのなかには馴染みが薄い方も多いかも知れません。しかし、実際には、チェコには世界的なヒット作を排出しているゲームスタジオが多く存在しています。近年ではチェコ外務省も、そのことの紹介を日本に向けて進めており、チェコ外務省の外郭団体である「チェコセンター」では、これまで2度にわたり【チェコゲームの世界】という企画展を開催。多くのチェコのゲームが紹介されています。

ところで、筆者はチェコのゲームスタジオと言うとAmanita Designを真っ先にイメージします。同社は『Samorost』シリーズなどの、独特の魅力的なアートスタイルのアドベンチャーゲームで知られており、特に『Machinarium』は世界中はもちろん日本でもさまざまなプラットフォームでプレイできる定番インディー作品のひとつです。筆者はこのデベロッパーのファンであり、これまですべての作品をプレイしているのはもちろん、公式ストアでシャツやぬいぐるみなども購入しています。

筆者のコレクションの一部。

そんななか、縁があり、先日Game*Spark編集部がチェコへと訪れる機会がありました。歴史ある町並みをもつチェコの旧市街では多くのデベロッパーと出会うことができましたが、そのなかにはAmanita Designも含まれていました。そこで今回は、Amanita Design創設者であるJakub Dvorský氏へのメールインタビューを実施。インタビューでは、日本が好きという同氏の作品づくりへの想いやこだわりについて、色々と回答していただきました!

Amanita Design創設者Jakub Dvorský氏インタビュー

Jakub Dvorský氏

――Amanita Designの設立経緯とJakub Dvorský氏のプロフィールについて教えてください。

Jakub Dvorský氏:Amanita Designは2003年に設立されました。スタジオの最初のゲームは『Samorost』で、これはプラハ工芸美術大学の卒業制作として取り組んでいたFlashゲームです。

スタジオは当初グラフィックデザインをメインに行うつもりだったんです。でも、すぐにゲームの方に重点を置くようになりました。最初は一人のスタジオだったのですが、少しずつ人が増えて今では30人ほどのチームで色々なプロジェクトに取り組んでいます。スタジオとして最初に手がけた大きなプロジェクトは2009年の『Machinarium』ですね。

私はスタジオ設立前の1990年代にいくつかのゲーム制作に携わっています。1995年にリリースされた『Dragon History』ではアーティストとして参加しています。その後、アドベンチャーとRPG要素を組み合わせた『Asmodeus: Mysterious Country of Ruthaniol』という作品でゲームデザインも行っています。

公式サイトより。

――『Samorost』を初めてプレイした時、その美しさと雰囲気に圧倒されました。Amanita Designの作品にとって、アートやBGMはどのような意味を持っているのでしょうか?

Jakub Dvorský氏:そうですね、それらの要素はもちろん大きな意味を持っています。我々のスタジオにはプロのアーティストやミュージシャンもたくさんいるので、作品で音楽を含めたすべての要素が一体となることの重要性というのを理解しています。我々にとってゲームとは緻密に作り上げたオーディオビジュアル作品でもあるのです。

我々はオリジナルのスタイルを持ち、オリジナル楽曲をメインとしているミュージシャンと協力して作品を作っています。選出については、彼らの音楽スタイルや方向性が、プロジェクトの世界観や雰囲気にどれだけ合っているのかというのを基準にしていますね。

――新しいゲームプロジェクトをスタートする際は、ゲームのアイデアとアートのどちらのインスピレーションが優先されるのでしょうか?

Jakub Dvorský氏:常に世界の制作を優先しています。ファンタジー世界でもシュールな世界でも、信用できて納得できる世界を作り上げることが最も重要なことです。そこからストーリーの基礎部分を制作していきます。

私の考えとして、ゲームプレイとアートというものは“創造された世界に奉仕するもの”でなくてはなりません。例えば『Machinarium』は人間のようなロボットの世界が舞台なので、アートスタイルもそういった感じを反映しています。一方で『Samorost』は自然や現実世界の質感を強調したアートスタイルを採用していますね。

――Jakub Dvorský氏が作品制作に影響を受けた映画や小説、アニメ、漫画、絵画などはどのようなものでしょうか?

Jakub Dvorský氏:そうですね、私は長年にわたって多くの芸術作品に影響を受けてきています。私だけでなくスタジオスタッフもカレル・ゼマンやイジー・トルンカ、ヤン・シュヴァンクマイエル、ブジェチスラフ・ポヤルといったチェコの伝説的な監督たちが制作したアニメーション映画の名作が大好きです。ロシアのアニメーション映画監督ユーリ・ノルシュテインも尊敬しています。

少年時代には、J・R・R・トールキンの創造した素晴らしい世界にたっぷりと浸っていました。好きな芸術家はヒエロニムス・ボス、レオナルド・ダ・ヴィンチ、マックス・エルンスト、Franti¨ ek Kupkaなどですね。

そしてもちろん多くのゲームにも大きな影響を受けています。『Gobliiins』『Myst』『The Neverhood(webアーカイブ)』などの作品は、最も大きな影響を受けた作品たちとしてよく紹介していますね。

――Amanita Designをはじめ、チェコのゲームスタジオには魅力的なだけでなく挑戦的な作品が多い印象があります。こういった制作背景について、チェコの文化的な側面があるのでしょうか。

Jakub Dvorský氏:そこに文化的側面があるのかというのはなんとも言えませんが、チェコのゲームシーンとして私が好きなのは、成功している多くのタイトルが情熱の産物であり、ゲームを愛し、自分たちが取り組んでいることを心から楽しんでいる人たちによって作られているということです。

『Beat Saber』『Factorio』『Kingdom Come: Deliverance』、そして『Arma』のような作品は、ただ計算され尽くしたビジネスプロジェクトではないことがわかりやすいと思います。

――『Machinarium』『Samorost 3』など、自然物と人工物の融合されたデザインが印象的です。クリックした際のリアクションなどもユニークなものが多いですが、どういった発想からデザインやギミックは生まれているのでしょうか?

Jakub Dvorský氏:我々は作品の中でただ見栄えのいいものではなく、生活しているような、機能的な世界を作り上げることを常に目指しています。どんな小さなものにもそこには意味があるんです。

インタラクティブな要素を通じて、プレイヤーのみなさんが積極的に世界を探索してみようと思うようなものを作ろうとしていますし、今のところはそれは上手くできていると思います。世界の色々なものにインタラクトできるというのは、プレイヤーが「その場所を訪れた」というのを印象づける大切なことなんです。

――言葉のないゲームデザインは誰でも遊びやすい印象です。このような「説明の少ないゲーム」では、ゲームの導線がとても重要だと思います。どのようなことを意識して制作しているのでしょうか。

Jakub Dvorský氏:言葉のないゲームデザインは非常に難しいものですが、その分のメリットもあります。例えば言葉の壁がなくなることで誰でも、小さな子供たちもゲームを楽しめるようになります。また、原初的で具体的でない語り口となるため、プレイヤーがその補完を行い、自身の経験や考えを投影することもできるようになります。

ゲーム内では、プレイヤーへのコミュニケーションとしてキャラクターたちの動きや簡略化されたアニメーション、シンボルを使ったコミックスタイルの吹き出しといった技法を使っています。そしてもちろん音楽や効果音は、言語のないコミュニケーション・スタイルの作品で感情を強調するために効果的で、非常に重要な要素でもあります。

――Amanita Designのゲームといえば音楽も世界観にあった素晴らしいものばかりです。作品づくりの際に作曲家やチームとどのような会話をするのでしょうか?

Jakub Dvorský氏:最も重要なことは「作曲家へできるだけ早くプロジェクトを紹介すること」です。ゲームの内容を完璧に説明し、脚本などのプロジェクトのあらゆる部分について話し合い、我々が何を作ろうとしているのか、何を表現したいのかというものを作曲家に最大限理解してもらうことが大切なんです。

こういった早期的なアプローチをすることで、作曲家の方々は音楽表現で自由な“創造的な自由”を得ることができるようになります。我々と作曲家の相互理解ができれば、プロジェクトが何を要求しているかというのもわかりやすくなります。

――スタジオの近くに作品に影響を与えてくれる森があるというのを過去に海外メディアの記事で読みました。スタジオのファンとしては是非とも行ってみたい場所です。Amanita Designは自然保護の観点でも積極的な印象ですが、作品を作る上での自然との触れ合いはどのような意味を持つのでしょうか?

Jakub Dvorský氏:自然というのは、我々にとって非常に大きなインスピレーションの源であり、とてもリラックスできる場所でもあります。これは特定の場所だけでなく、大自然というのはどこでも素晴らしいものだと思います。

自然をよく観察し、細かい部分にまで注意を払えば、そこには多くの細やかな素晴らしい発見があります。日本にも多くの美しく素晴らしい森がありますね!

――Tシャツやぬいぐるみなど、何度か公式サイトから買わせてもらっています!どれも素敵なデザインですが、こういったグッズもチームのスタッフがアイデアを出すのでしょうか?

Jakub Dvorský氏:ありがとうございます!そうですね、基本的にグッズのデザインに関しては自分たち自身で考えています。例えば、今度リリースされる『Phonopolis』のアーティストであるEva Markovは、限定版LPのジャケットやTシャツのデザインをやってくれました。

我々が手がけているゲームというのはデジタルなものでもあるので、こういった物理的なグッズや作品が我々の仕事の証として残るというのはとても嬉しいものです。

――最新作『Phonopolis』のリリースを本当に楽しみにしています。この作品についての魅力を教えてください。

Jakub Dvorský氏:『Phonopolis』はAmanita Designの作品として、これまでのタイトルとは少し新鮮な雰囲気を持った作品です。そのなかには多くの新しい要素が含まれています。

今作の世界はダンボールで作ったモデルと手描きのテクスチャで表現されています。ストーリーに関しては人々の心理操作や個人主義といったテーマがあり、これまで作品よりも少し“複雑でシリアスなもの”になっていると思います。ただし、全体的な雰囲気は楽しく明るく遊べるようになるように心がけています。

また、前作と異なり『Phonopolis』は3D表現であるのも特徴です。ゲーム内では理解しやすいようなナレーションも用意されていますよ。

――最後に、日本のファンに向けてメッセージをお願いします!

Jakub Dvorský氏:日本の皆様、いつも応援していただいてありがとうございます!私達は日本が大好きで、例えば『Samorost 3』で気付かれた人もいるかも知れませんが作品にとってインスピレーションを受ける場所のひとつでもあります。

将来的に我々が日本を訪れ、皆様にお会いできる機会があることを願っています!


Amanita Designの最新作『Phonopolis』はPC(Steam)向けにリリース予定。また、公式YouTubeチャンネルでは同社作品のサウンドトラックや制作風景、スペシャル映像なども公開されています。非常に美しくユニークなAmanita Designの世界にたっぷり浸ってみませんか?

《Mr.Katoh》

酒と雑学をこよなく愛するゲーマー Mr.Katoh

サイドクエストに手を染めて本編がなかなか進まない系。ゲーマー幼少時から親の蔵書の影響でオカルト・都市伝説系に強い興味を持つほか、大学で民俗学を学ぶ。ライター活動以前にはリカーショップ店長経験があり、酒にも詳しい。好きなゲームジャンルはサバイバル、経営シミュレーション、育成シミュレーション、野球ゲームなど。日々のニュース記事だけでなく、ゲームのレビューや趣味や経歴を活かした特集記事なども掲載中。

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