『崩壊:スターレイル』新たな舞台「ピノコニー」のキーワードは“夢”。現実で叶わぬ幻想を描く、レトロフューチャーの世界【ゲームで世界を観る 特別編】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

『崩壊:スターレイル』新たな舞台「ピノコニー」のキーワードは“夢”。現実で叶わぬ幻想を描く、レトロフューチャーの世界【ゲームで世界を観る 特別編】

『崩壊:スターレイル』ver2.0で訪れる新たな惑星「ピノコニー」のアートスタイルから、“レトロフューチャー”を解説します。

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『崩壊:スターレイル』新たな舞台「ピノコニー」のキーワードは“夢”。現実で叶わぬ幻想を描く、レトロフューチャーの世界【ゲームで世界を観る 特別編】
『崩壊:スターレイル』新たな舞台「ピノコニー」のキーワードは“夢”。現実で叶わぬ幻想を描く、レトロフューチャーの世界【ゲームで世界を観る 特別編】 全 26 枚 拡大写真

HoYoverseによるPS5/PC/iOS/Android向けRPG『崩壊:スターレイル』のVer.2.0アップデートが、2月6日に実施されました。仙舟「羅浮」の事件が一段落した星穹列車が次に向かうのは、人々が享楽に耽る夢の星「ピノコニー」。そこはかつてカンパニーの監獄として利用されていた星で、今は「ファミリー」と呼ばれる派閥によって統治されています。

Ver.2.0で語られる新たな目的地「ピノコニ―」

「ファミリー」から調和セレモニーの招待状を受け、主人公である“開拓者”一行はその宴に出席することになります。セレモニーにはスターピースカンパニーなど様々な派閥が招かれ、有力者が一堂に集う場になりそうです。

現在のピノコニーは「宴の星」と評される惑星で、かつての監獄がファミリーの手に渡ってからはリゾート地へと姿を変えました。主人公はゴージャスな「ホテル・レバリー」に宿泊して、なんでもありな不思議な世界「夢境」へと招待されます。

現実とは異なる空間である「夢境」はドリームメーカーという設計者によって作られており、現実ではあり得ない法則が働くことがあります。ピノコニーではそんな奇妙な現象を錯視パズルなどミニゲームの形でハックし、危険な裏側の世界を覗いていくことになるのです。

夢の世界では、街のマスコットキャラクターである「クロックボーイ」が登場します。アニメーション黎明期を彷彿とさせるビジュアルのクロックボーイは、街の中で起きているとある問題を解決する力を授けてくれる重要な存在です。

街を歩いているとやけに情緒が不安定な人がいて、周囲と何らかのトラブルを起こしているところに遭遇することがありますが、主人公は“彼らの感情に干渉できる力”を得ています。そこで時計や歯車の形で表される感情を操作・修理することで、新たな出来事を起こし、ピノコニーの秘密を隠すヴェールを少しずつ剥がしていくのです。

『崩壊:スターレイル』公式サイト

夢の星を彩る“レトロフューチャー”なデザイン

ピノコニーのデザインテーマは「レトロフューチャー」を強く思い起こさせるものとなっていて、約100年前のパリ、ニューヨークを彷彿とさせるデザインに溢れています。

装飾は植物のような優美な曲線と幾何学的な直線のパターンが混ざり合い、現代にはない不思議な乗り物が街中を走り回る。現在の私たちが思い描くのとは違う、デジタル機器などのない昔の時代に想像された「未来予想図」から再生しているようです。こうした「レトロフューチャー」な意匠はゲーマーにとって馴染み深く、“荒廃した海底都市”や“核戦争で荒れ果てたアメリカ”、直近では“大きな発展を遂げた1950年代ソ連”といった架空の舞台で親しんだ方も多いことでしょう。

そういった「レトロフューチャー」のイメージは、人々が享楽を謳歌していたフランスの「ベルエポック」と、アメリカの「ジャズエイジ」という二つの時代をミックスしたデザインで描かれています。第一次世界大戦を境に前後するものの、どちらも文化芸術が花開いた特異な時代でした。

(C)GettyImages

19世紀末から20世紀初頭、ベルエポックのパリにはゴッホを初めとする多くの芸術家が集まり、近代まで国家権力や貴族が支配してきた芸術の世界が、民主化や成金ブルジョア層の登場によって一気に解放され、大衆消費社会へと芸術の主軸が移行します。

リトグラフで細密なカラー印刷が可能になり、ロートレックミュシャなど、商業の広告や雑誌の挿絵で活躍する画家が登場したのです。額縁の中から街中へアートが広がり、富めるものも貧しいものも、パリにいれば常に芸術の風に当たることができました。ベルエポックの時代に特徴的な優美な曲線を主体とするスタイルは「アールヌーヴォー」、つまり新しい芸術と呼ばれます。

(C)GettyImages

第一次世界大戦が終わると、レコードや映画などの現在に通じるエンターテインメントが普及し、戦争で整えられた量産体制によって工業製品にも洗練されたデザインが生まれます。すると人々はアールヌーヴォーの手仕事的なスタイルを捨て、先進的な工業らしさを感じる直線とメタリックを多用した「アールデコ」に向かいます。

そしてアメリカでは財を成した「成金」がニューヨークに集まり、そこはパリに変わる新しい享楽の摩天楼へと変貌しました。見上げるような高層ビルが建ち並び、クライスラービルディングはアールデコを代表する建築です。

ニューヨークでは工事のために大量の労働者が集まり、お金がある人は夜な夜なナイトクラブに集まり、レコードの曲で踊りながら社交を楽しむ。フィッツジェラルドの小説「グレート・ギャッツビー」の世界です。有名なガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」はこの狂騒の20年代に作曲されました。「ジャズエイジ」の空気を詰め込んだ一曲と言えるでしょう。

産業革命の蒸気からガスや電気への転換が進むこれらの時期には、技術の発展を夢見るSF的想像力も芽生えました。技術が進んだ未来予想図を描く、現代に通じる「SF」の祖とされているのがフランスのジュール・ヴェルヌです。

ジュール・ヴェルヌの時代は自動車がようやく登場したばかりで、技術によって人間が飛躍的に加速することが驚きを以て迎えられた時代でした。自動車が馬より速くなり、飛行機が空を飛ぶまで間近と言うときに、人間を最高速まで加速すればどこまで行けるのか、と想像して描かれたのが「月世界旅行」です。技術の進歩の先には人類の冒険する新たな場所が開けるに違いない、そういう楽観的な希望を人々はテクノロジーに抱きました。

ジュール・ヴェルヌの時代を彷彿とさせるのは、機械類に使われている銅や真鍮の金属です。これらは後に主流となる鉄やアルミに比べて重い金属なので、エネルギー効率の点から使われなくなりました。今の基準でこれらのデザインを見ると、未来的なスピード感や軽さよりも、ゆっくりと重い印象を受けるのではないでしょうか。『崩壊:スターレイル』はSF作品ではありますが、ピノコニーで描かれている街の風景や人々の暮らし、交通網はただ「未来らしさ」を表現したものに留まりません。

当時の人の「最先端」から想像した未来は、さらに新しいテクノロジーの登場で「有り得るかもしれない未来」から「実際とは違った想像図」へと変わっていきます。ブラウン管やアナログな配線で構成されているコンピューターは、今ではすっかり薄い液晶やパソコン、スマートフォンに置き換わっていますよね。しかし昔の人は「すまほ」なんて知る由もないので、その時々の最先端の延長線上に未来を描きます。

現代のSFでも、個人用デバイスはスマートフォンを基準にしたもので描かれますが、かつてのガラケーのように、また次世代の新しいものが登場すれば、スマートフォンもまた一昔前のアイテムの仲間入りをするのでしょう。

新しい技術で上書きされるほど、かつての想像図とのギャップは広がり、やがて「実現しなかった古い想像図」になります。そのズレを楽しむのがレトロフューチャーなのです。

見た目には華やかな時代を描くスタイルは、『崩壊:スターレイル』のみならず様々な作品でよく登場するほど人気です。しかし、こうした豪華絢爛な世界は一時的な快楽をもたらしてくれますが、一方で現実逃避をする代償が付きもので、その夢が覚めたときの不安は一層強くなります。

ベルエポックではそれに呼応するように、芸術家は「死」「エロス」といった旧来のキリスト教的価値観で忌避されてきた領域に踏み込みます。この傾向を「デカダンス(退廃)」と言い、不穏や不気味な雰囲気の作品が生まれました。

(C)GettyImages

世紀末パリの空気は、上図のドガ「カフェにて」に見ることができます。カフェに座る男女は娼婦とその客で、新聞が置いてあることから朝の情景であると分かります。女性は派手な服装で着飾っていますが、その表情は力が抜けて気怠そうにしています。テーブルには酒のグラスが置かれていて、嗜むと言うよりは仕事終わりの気休めに酔っ払うためにも感じられます。

女性の前に置かれているお酒は「アブサン」で、ニガヨモギなどを使ったハーブ系リキュールです。角砂糖で甘くする飲み方が人気で、価格も安く手に入れやすいため上流から貧乏芸術家まで一世を風靡しました。

しかし、アブサンは飲み過ぎると幻覚などの中毒症状を引き起こすため、心身を崩す人が後を絶ちませんでした。原因はハーブの成分とも、強過ぎる度数によるアルコール中毒ともされますが、一部の国で販売禁止を命じるほどの社会問題を引き起こしたのです(現在では成分を調整して復活させたものが販売されています)。

絢爛豪華な意匠の裏にあるもの

レトロフューチャーという描写は、現実の実際の経過に目を瞑り、過去の時点から見続けた夢に浸るという意味も与えます。20年以上にわたって芸術と科学技術が大きく進歩したフランスの「ベルエポック」は第一次世界大戦によって幕を下ろし、戦後の繁栄によってアメリカを彩った「ジャズエイジ」は大恐慌によって終焉を迎えました。日本で言えばバブル崩壊のようなものでしょうか。破滅が近づくのを見て見ぬ振りをして踊り続ける……その代償がどれほど大きいものかは言うまでも無いでしょう。夢から覚めたとき、結局目を逸らしていたに過ぎないと気付くのです。

上部に巡らされているパイプは「監獄星」であった頃の名残。

『崩壊:スターレイル』Ver.2.0で列車組が訪れる「ピノコニー」もまた過剰なまでに豪奢であり、物語上でも「夢の世界」と語られています。かつては犯罪者を収監する監獄用の星だったこの地は、夢の世界では快楽主義的なユートピアの姿を見せています。

「夢の並び替え」と呼ばれるスロットマシーン。ミニゲームとしてプレイすることも可能。

そこで主人公が出会うのは、調和の星神・シペを崇める集団「ファミリー」と各派閥の代表達。星穹列車の面々が参加することになる“宴”、そして主人公を夢の中に誘った「ホテル・レバリー」から始まる物語は、どのようなものになるのでしょうか。そこで起こる様々な出来事が、ただ荘厳華美なものに留まらないことは間違いないでしょう。レトロフューチャーを感じさせるビジュアルに心惹かれた方は、ぜひVer2.0で展開するエピソードで夢のようなひとときを堪能してみてください。


スペースファンタジーRPG『崩壊:スターレイル』は、PS5/PC/iOS/Android向けに基本プレイ無料で配信中。夢の星「ピノコニー」でのエピソードを語るVer.2.0は2月6日より配信され、全プラットフォームでプレイできます。

『崩壊:スターレイル』公式サイト

ライター:Skollfang,編集:キーボード打海

ライター/好奇心と探究心 Skollfang

ゲームの世界をもっと好きになる「おいしい一粒」をお届けします。

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編集/「キーボードうつみ」と読みます キーボード打海

Game*Spark編集長。『サイバーパンク2077 コレクターズエディション』を持っていることが唯一の自慢で、黄色くて鬼バカでかい紙の箱に圧迫されながら日々を過ごしている。好きなゲームは『絢爛舞踏祭』。

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