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『バルダース・ゲート3』禁断の果実を手にしたい?人間の“欲”を刺激する伝説上の悪魔取引事例【ゲームで世界を観る#68】

破滅を迎えるか、小賢しく抜け道を探すか、結末はあなた次第。

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『バルダース・ゲート3』禁断の果実を手にしたい?人間の欲を刺激する伝説上の悪魔取引事例【ゲームで世界を観る#68】
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『バルダーズ・ゲート3』で主人公、または仲間になるオリジンキャラクターのウィルは、ウォーロックの力のために悪魔と契約を交わしています。

強力な魔術を得た代わりに悪魔からの指令を果たさなければならず、拒否すれば大きな代償を払わされます。冒頭時点では、同じくオリジンキャラクターのカーラックを殺せと命じられていて、どちらを選ぶか、パーティー内で起こる最初の対立になっています。

道中では他の悪魔とも出会い、時には取引を巡る駆け引きにも発展します。大抵はろくでもない条件を押しつけてきますが、機知を駆使すればこちら側が優位に立つ状況に持ち込むことも可能です。口八丁舌先三寸で乱世を泳ぐ冒険者なら、上手くやり込められるかもしれませんね。

悪魔との取引は古くから多く民話が残っており、何らかの成果を得たものの最終的に破滅する、条件を逆手にとってやりこめる、魂を取られる直前に悪魔を退散させるなど、その結末はバリエーションに富んでいます。悪魔に限らず妖精妖怪などの超常存在の魔法によって、常人以上の力や運を手に入れる物語はありますが、キリスト教世界における「悪魔」との取引は、特に背徳の要素が含まれます。誘惑によって宗教的道徳が抑えられている人間の欲をかき立て、地獄に行く魂を増やそうというわけです。

アントン・カウルバッハ:ファウストとメフィストフェレス

最も有名な物語はドイツの「ファウスト」でしょう。16世紀に実在したとされる錬金術師ファウストは実験の最中に爆死したことから、悪魔との取引で非業の死を遂げたと噂が立ちました。そこから創作の題材として芸術の中に登場します。

物語のファウストは学問への行き詰まり、あるいは退屈さを覚えて、禁断の知識や快楽を求めて悪魔と契約し、死後の魂と引き換えに万能の力を得ます。今で言うところの「チートで無双」のようなものでしょうか、ファウストは解放された欲の赴くままに行動を重ねていきます。伝説でファウストが契約した悪魔こそ、かの有名なメフィストフェレスなのです。ファウストに課された条件は、「この時間が永遠に止まってくれ」と願った瞬間に契約が終わるというもの。書き手によって内容は異なりますが、この条件だけは常に変わりません。

結末はバラバラの遺体が後に発見されるパターンが定番ですが、ゲーテ版の場合は恋人の祈りによって神に救われます。欲のままに行動する、つまりキリスト教的には「大罪人」であるファウストが神に許されるのは本来あってはなりません。一応やったことが裏目に出る因果応報的な部分もあるものの、これは非常に画期的なことでゲーテの戯曲は大ヒット。音楽の分野はリスト「メフィストワルツ」などゲーテ版に着想を得た作品が多く残っています。

パガニーニ「24のカプリス」より 第24番/石川綾子

ゲーテと同時代の19世紀初頭、悪魔と取引した音楽家がいるという噂が立ちました。ヴァイオリニストのニコロ・パガニーニです。パガニーニは現代の演奏家でも苦労する超絶技巧の曲を数多く残し、演奏会を常に満員にしてとにかくモテる、若い頃は無類のギャンブル好きと、危ない香りのする天才ロックスターのような人物でした。お世辞にも真面目とは言えない生活をしながら、問答無用の圧倒的なテクニックで聴衆を惹き付ける姿に、周囲は悪魔的な印象を受けたのでしょう。いつの間にか彼の二つ名は「悪魔に魂を売った男」になってしまいます。

彼はそれを逆手に取り、そのイメージを自分のブランディングに利用しました。全身黒で揃え、誰も真似できない曲芸のようなパガニーニの演奏は、同時代の音楽家はほぼ全員聴きに行っています。しかし、死後にはそれが災いして教会から埋葬を拒否され、正式な墓地を得るまでに長い時間がかかったそうです。

悪魔が求める代償を回避し、利益だけを得るパターンはグリム童話「百姓と悪魔」などの民話に見ることができます。「百姓と悪魔」では、悪魔が求める「畑の半分の作物」に対して、百姓は土の上、下で分けようとさらに条件を加え、片側しか収穫できない麦やカブを植えて悪魔を騙しました。

取引ではなく、悪魔から闇バイトのような仕事を依頼するケースもあります。「3人の見習い職人」は地獄に落とす対象が別にいて、仕事をなくした職人へ悪魔がその手伝いを持ちかけます。3人は特定の言葉だけを喋るよう求められますが、殺人事件の容疑をかけられ捕まってしまいました。裁判中でも3人が条件を守っていると、それによって真犯人は捕まり、悪魔はその魂を手に入れます。依頼を完遂した職人達は約束通り生涯困らない富を手にしました。

悪魔の誘惑はハイリスクハイリターンを求める人間の性を表します。冒険をするかしないか、そのどちらをとっても納得するか後悔するかは本人の覚悟次第です。もしあなたの前に悪魔が現れたら、契約しますか、しませんか?


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