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【RTA特集】『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のクリアタイムは2023年の間にどこまで縮んだか

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のクリアタイムは2023年でどこまで縮められたのか。RTA走者への取材に基づき、その発展の歴史を紐解きます。

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2023年5月に発売され、世界で数々の賞を獲得した『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム(以下、ティアキン)』。12月に開催された「The Game Awards 2023」では、「Game of The Year」の受賞こそ逃したものの、「Best Action/Adventure Game」に輝いた今作は、間違いなく2023年を代表する一作になったと言えるでしょう。


そんな本作では、チキン完成までのタイムを競うコンテストがスペインのケンタッキーフライドチキンによって開催されるなど、速さを求める遊び方も広く楽しまれています。『ゼルダ』シリーズといえば国内外でRTAが非常に活発であり、筆者も発売前からRTAコミュニティによる今作の研究に期待していました。前作『ゼルダBotW』では23分42秒という世界記録が樹立されていますが、果たして今作では2023年のうちに、クリアタイムがどこまで縮められたのでしょうか?

本記事では、はじめに2023年末時点での最速攻略ルートを紹介し、続けてRTAコミュニティによるルート開拓の歴史を紐解きます。なお本記事は、『ゼルダBotW』100%RTA記事に続いて、『ティアキン』走者でもあるあの氏に提供いただいた情報に基づいて執筆しました。


『ティアキン』RTA 2023年版最速ルート紹介

2023年に記録された『ティアキン』最速クリアタイムは、大手記録集積サイト「speedrun.com」上では41分台となっています。RTAでは用いるバージョンやamiiboの使用有無によって大きくルートが異なりますが、今回は、Player 5氏が以下の動画内で使用している、amiiboを使わない「Any% No Amiibo」のプレイ内容を紹介します。

まずは開幕。高度なジャンプ技術を駆使して開始1分でいきなり天井裏に侵入します。ゼルダとのイベントシーンをスキップするための技ですが、繊細な入力が求められるため、開幕からかなりの難関です。

この技が発見される前は、開始7分弱ほどの区間が単調な移動のみであったため、繰り返しプレイするRTA走者にとっては退屈な時間帯でした。そのため、タイマーを6分40秒にセットしたうえで“目覚めの間”から計測を開始しても良いというルールが走者間投票のもと制定されていました。ところが、ルール変更の直後に1分ほどの短縮となるこの技が見つかり、最上位を目指すプレイヤーは結局このルールを活用できなくなったという経緯があります。

続いて、歯車を起動するイベントをスキップします。ここで大きく飛び上がるジャンプ技は、翼の入った宝箱に無理やりアクセスするために編み出されたことから、翼を授けるという意味を込めて「レッドブルジャンプ」と呼ばれています。その後は目覚めの間の上にある翼3つを早期取得するやいなや、グリッチを使って増殖します。

オープニング終了後、大空から池を目がけて飛び込むシーンでも高難度技が登場します。空中に出した翼が垂直になる瞬間に一度掴まることで落下ダメージをリセット。すぐさま別の翼を出して乗る「ウィングフリップ」というテクニックです。パラセールを取得することなく進行するRTAでは、高所からの落下ダメージをいかにしてキャンセルするかが重要です。

この時、無理やり空中で翼に乗ってでも地面との接触を避けることが、最適な攻略順構築のカギです。上陸後は接地することなく翼の上を渡り歩き、そのままプルアパッド入手から時の神殿のイベントまでを進めます。イベント終了後はわざと落下するのですが、その復帰先は、前回タッチした地面のある場所、つまりオープニング開始前に立っていた空島。トーレルーフのある次の目的地付近へと一瞬でワープ(いわゆるデスルーラ)してしまいます。

さて、本作のRTAで大活躍するのが「ザグル」と呼ばれるグリッチです。これは、装備を落とせないような状況で特定の装備を落とそうとすることでゲームが勘違いを起こし、装備が身体に張り付いて増殖するというもの。これ単体でも武器の攻撃力を重ねて火力を上げるのに役立ちますが、RTAではこのグリッチを応用して様々な技に繋げます。

ザグルを何度も繰り返すとゲームに負荷がかかり挙動がおかしくなります(通称 ザグルオーバーロード)。この状態で装備を切り替えると装備品が地面に落ち、その弓を武器にスクラビルドすることで、どこでも「無」の弓を引けるようになります通称 アロースマグル)。この「無」の弓を引き絞りキャンセルしたときに空中で跳ねる現象が起こるのですが、これをテンポよく連続して行うと慣性のままに空中をぴょんぴょんと飛行できるのです。

以上のようなテクニックを駆使して30分ほどで空島の攻略を終えた後は、いよいよハイラルの大地へと降り立ちますが、RTAではほぼ一直線にボス戦へと向かいます(移動中、ボス戦で必要となるアイテムをこっそり増殖しておきます)。

ボス部屋はハイラル城の真下にあるため、お城の壁を抜けて「裏世界」を経由することで真っすぐ向かいます。「裏世界」に入るには「JCC(Jumpslash Cancel Clipping)」と呼ばれるグリッチを使って天井を抜けます。通常のジャンプ斬りを「無」の弓でキャンセルした際のジャンプを繰り返すことで少しずつ上昇できることを利用した壁抜けです。

「裏世界」の床を抜けて表の世界に戻って来たリンクを待ち構えているのは雑魚ラッシュですが、ほぼ初期状態のリンクにとっては強敵です。RTAにおける戦法は、予め増殖しておいたルビーをポイポイと投げつけるというもの。投げた後に生じる隙をモドレコでキャンセルすることで、素早い連投が可能になります。今後の戦闘に向けて、王家の槍2本と魔物素材の回収も忘れずに。

雑魚敵を一掃した後は、本来であれば各地のボスとの連戦が始まるところですが、最初のフリザゲイラとの戦いの途中で「JCC」による壁抜けを再び使い、ガノンドロフ戦へと直行します。ガノンドロフ戦では素早くザグルを繰り返して、王家の槍の攻撃力を2倍、3倍、4倍と増強します。これに先ほど手に入れた魔物素材をスクラビルドすることで、ガノンドロフの各形態を一度のラッシュ攻撃で倒し切ります。

ちなみに、ザグルによる大幅な火力上昇がガノンドロフに対して有効なのは初期版のみです。このことが一因となり、本記事執筆時点での上位タイムは軒並みバージョン1.0.0で記録されています。

最後は黒龍となったガノンドロフ戦ですが、この戦闘も技術が詰まった非常にシビアなものです。まずは空中で飛距離を稼ぐテクニックを駆使して最速で1つ目の目玉に向かいます。目玉を破壊した後の衝撃で空中に投げ出されたら、翼に乗り込み2つ目の目玉を続けざまに潰します。

その後は白龍に乗せられて高度を稼ぎ、同様に3つ目、4つ目の目玉を連続で撃破します。以上の流れを決めて2サイクルで全ての目玉を破壊できれば、白龍の周期を上手く調整して乗り込み、素早く黒龍の頭へ。とどめの一撃は黒龍から飛び降りながら与えることで、暗転の時間を短縮します。

最後はゼルダの手を掴んだ瞬間にタイマーストップ。以上が2023年版『ティアキン』RTAの最速ルート(amiibo不使用)の概略です。

補足:テキストがロシア語で表示されているのは、単にテキストボックスが少ないからだけではなく、テキストを送る際の入力受付開始が早く、RTA上有利に働くため。

『ティアキン』RTAルートの変遷と今後の展望

ここからは、現在の攻略ルートに至るまでの『ティアキン』RTA開拓の歴史をまとめます。発売直後から数多くの走者が研究に励み、目まぐるしくルートが移り変わった激動の5月。発売からわずか19日で最初の1時間切りを達成したのは、日本のプレイヤーZdi氏でした。

この頃には現行のアイテム増殖技やザグル、各種ジャンプテクニックが一通り出揃っており、既に洗練された攻略順ではあったものの、今ではスキップされているカットシーンの視聴やライネルとの戦闘といった、短縮余地となる要素もまだまだ残されていました。5月25日に配信されたバージョン1.1.2ではRTAに有用なグリッチのほとんどが修正されてコミュニティに激震が走りましたが、最速を追い求める走者達はバージョン1.1.1を保存して走り続けることに。

続いて台頭したのが、ブループリントを取得することで可能になるグリッチ「ABCS(Autobuild Cancel Slide)」を活用した攻略ルートです。「ABCS」の効果は設計図に登録された作成物の形状によって様々で、高速移動や高所への上昇、壁抜けなどに活用できます。ブループリント取得のために地底を経由する分の移動はタイムロスになってしまいますが、その後のボス戦までの道のりを大幅に短縮します。

また、序盤では翼の早期取得(アーリーウィング)が確立されるなど、全体的な研究が進み、6月19日にはPlayer 5氏によって初の50分切りが達成されました。戦闘パートが前節で紹介した内容に近いレベルまで最適化され、バージョン1.0.0の使用が主流となったのもこの時期です。

以降は「JCC(Jumpslash Cancel Clipping)」を使用するルートが主流となり、ブループリントは再び影を潜めることに。7月に開幕直後のカットシーンをスキップする壁抜けが発見されると、ギミックの周期調整や取得アイテムの最適化をはじめとする細かな改善が積み重なって難易度はさらに上昇し、現在ではミスなく走り切ることが極めて困難なRTAとなっています。

2023年末時点で、amiiboの使用を含めたAny%全体の最速記録はRedSlay9氏による41分47秒。この記録は奇しくも、前節で紹介したPlayer 5氏による41分51秒(amiibo不使用)と同日、12月24日に達成されたものです。

両氏はそれぞれの記録動画内の説明文中で、今後の記録更新にはダルケルのamiiboが必要であることに触れています。ダルケルのamiiboを使うと開始15分ほどでトパーズやルビーを入手でき、これらを上手く活用すれば40秒近い短縮が見込める半面、その入手確率は6%と非常に低く、これまで以上に多くの試行が犠牲になります。

トパーズによるタイム短縮のカギは、本作における感電の仕様です。トパーズをスクラビルドした武器と電気玉を使って過負荷状態を生み出すことで、従来よりも素早く「アロースマグル」が可能な状態に。2024年を迎え、宣言通りダルケルのamiiboを使った世界記録更新に取り組み始めたPlayer 5氏は、1月7日に1発でトパーズを引き当てると、そのランを最後まで走り切り、41分39秒という新たな世界記録を打ち立てたのです

2023年にはゲーム画面を見ることなく目隠しでクリアする猛者まで現れるなど、多方面から深く研究された『ティアキン』RTA。2024年1月21日には世界最大級のスピードランイベント「Awesome Games Done Quick 2024」でも披露される予定となっており、今年もますます盛り上がることが期待されます。2024年は世界記録がどこまで縮まることになるのか、今後も目が離せません。

(本記事内の画像はTotK Any% No Amiibo 41:51 (v1.0.0) [WR]よりスクリーンショットを引用しました。)


《とんこつ》

RTAプレイヤーです とんこつ

福岡県出身。東京大学卒業後、2018年にRTA(リアルタイムアタック)に出会い、現在に至るまでTwitch & Youtube Partnerとして活動中。主なプレイタイトルはスーパードンキーコングシリーズとマリオ&ルイージRPGシリーズ。RTA in JapanやGames Done Quickへの出場多数。

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