“繭に籠り、蚕は最後の夢を見る”––儚くも美しい和風ホラー『ウツロマユ - Hollow Cocoon -』【プレイレポ】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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“繭に籠り、蚕は最後の夢を見る”––儚くも美しい和風ホラー『ウツロマユ - Hollow Cocoon -』【プレイレポ】

蚕のみる夢の内側へ。ホラー作品ながら郷愁を誘うやさしげな雰囲気の作品です。

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“繭に籠り、蚕は最後の夢を見る”––儚くも美しい和風ホラー『ウツロマユ - Hollow Cocoon -』【プレイレポ】
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インディーゲーム作品を手がけるNAYUTA STUDIOは12月7日、ホラーアドベンチャーゲーム『ウツロマユ - Hollow Cocoon -』PC(Steam)でリリースしました。

本作は2018年にNAYUTA STUDIOが手がけた『CINERIS SOMNIA』以来、5年ぶりの新作となる一人称視点の和風ホラーアドベンチャー。
舞台となるのは1980年代の日本のとある山深い村。祖母危篤の報せを受けて十数年ぶりに母の生家を訪れた主人公・陣場湊(じんばみなと)が、襲い来る怪異から身を隠しつつ、この家の秘められた真実に迫っていきます。

うら寂しくも儚い雰囲気を醸し出す映像表現の美しさが話題となった本作は、リリース前から多くのユーザーの期待を集めていました。本記事ではメインとなるホラー要素だけでなく、本作の大きな特徴であるノスタルジーを感じさせる描写にも注目したプレイレポートをお届けします。

静まり返った集落、旧家への道をひとり歩く

減速するバスの車窓から見える、バス停の「一ノ瀬」という文字。停車したバスのステップを降り、その地に足を踏み入れる湊。操作可能になる直前の短いシークエンスですが、プレイヤーを作中世界に引き込むとともに、湊の漠然とした心細さを伝える演出に、胸の高鳴りをおぼえます。

バス停から祖母・深山絹(みやまきぬ)の住んでいた家をひとり目指す湊。湊の父は絹の転院手続きを終えてから、遅れて到着するという手はずになっています。道中にはひと気がなく、点在する看板からどうやらダム建設によって沈みゆく土地であることが窺い知れます。周囲を山に囲まれた集落では、草木が生い茂り、家屋や打ち捨てられた物がしんと佇む景色は強く郷愁を誘います。

冒頭の時点で雰囲気がとても素晴らしいので、ホラーとしてだけでなく、ノスタルジックな気分を味わえるウォーキングシミュレーターとして本作を捉えてもおもしろいと思いました。なお、画面の揺れを抑える画面酔い低減機能のほか3段階の難易度選択を備えるなど、全体的にユーザーフレンドリーなつくりで、一人称視点が得意ではないプレイヤーでも安心してプレイできます。

商店に残されたコインゲームはゲーム中に収集できる10円玉でプレイ可能。この後も様々な場所で登場します。

深山家––知られざる過去が眠る母の生家

湊の母の生家である深山家はかつて養蚕で財を成した家柄で、大邸宅というわけではありませんが家屋はそれなりの広さがあります。湊もかつて一度訪れたことがありますが、当時の記憶はほとんど無く、この家は初めて訪れるのも同然。プレイヤーと同様、どこに何があるのか手探りで屋敷を巡っていきます。

探索中には、湊が祖母に対し好意的な感情を抱いていないこと、それとは裏腹に祖父を慕っていたこと、そして家財道具の様子から祖母の物忘れが激しくなっていたことが見て取れます。家に辿り着くまでの景色もそうでしたが、家屋の作りや小道具も懐かしさを感じさせる作りとなっており、本作がホラーであることをつい忘れてしまいます。

周辺を林や木々に囲まれていたり、家屋自体に外光が入りづらい作りになっていたりと、日本の古い住宅でみられるような景色が見事なライティングで表現されており、筆者はいたく感動しました。

疲れを癒すため、居間でひととき眠りについた湊。悪夢にうなされて目が覚めると日が落ち、あたりはすっかり暗くなっています。
部屋数が多いため、電灯のスイッチを探すのひと苦労。こうした家屋の廊下に明かりが無いという点もやけにリアルです。

ひとまず喉の渇きを癒すために台所に立ち寄った湊は、ガラス越しにうごめく怪しい人影を目撃します。正体を確かめるべく裏庭へ向かうと、怪物としか言いようがない異形の者が鶏を貪り食らい、こちらに気が付いた様子……。ここからはいよいよ、この怪物から逃げつつ屋敷を探索する本格的なホラーアドベンチャーとなっていきます。

正体不明の怪物から身を隠し、屋敷に隠された謎を解け

湊が怪物に対抗する手段はほぼ存在せず、基本的には逃げ回ったり隠れることしかできません。唯一、セーブポイントである「紅の護符」が発する力によって化け物を遠ざけることができますが、置かれた場所と使用できる回数が限られているため、あくまで緊急用の手段となるでしょう。

怪物が近づいてくると、その予兆を告げる音が流れてきます。見つかる前にステルスゲームよろしく押し入れやつづらの中に隠れたり、物陰から化け物の様子を窺うことでピンチを切り抜けていきましょう。怪物の隙を見てアイテムを回収したり、謎を解いていくことでゲームは進行していきます。怪物への対処というアクション要素もありますが、屋敷を探索して謎を解くという部分に重きを置いているため、古典的なミステリーアドベンチャーゲームをプレイしている感覚があります。

怪物が現れてからは屋敷の電灯がすべてショートしてしまい、暗がりの中、懐中電灯を頼りに探索を続けていくことになります。しかし明るさと引き換えに怪物に発見されやすくなってしまうため、点灯するタイミングは慎重にならざるを得ません。

本作は古い家をリアルに再現しているということもあって、明かりが無ければ周囲の状況はほとんど把握できません。そして部屋が多いこともあり、ある程度間取りや位置関係をプレイヤー自身が掴んでおかないと、化け物に追い詰められてあっという間にゲームオーバーになってしまいます。こうした点はゲームの視認性を重視するという見方ではマイナスになりますが、一方で古い家屋の作りをゲームに活かしているともいえます。

筆者としては後者の試みをおもしろい!と感じる一方で、画面の暗さがストレスに繋がり、集中したプレイの妨げとなることがありました。こうした場合、本来意図された難易度やライティングからは外れてしまいますが、場面に応じて設定画面で明るさを変更してゲームをプレイすることもひとつの手です。

謎解きは多くの場合、1つの仕掛けに対して1アイテムを使用すれば解決するため、それほど難しくありません。アイテムを使用した際にはテキストだけでなく、きちんとアニメーションが用意されていたりと、丁寧な雰囲気作りを行っていることが印象に残ります。

その一方で怪物に見つかった際の行動はひたすら逃げ回ることに終始してしまい、探索に比べるとやや単調なプレイになっているきらいがあります。謎解きに緊張感を与える障壁として立ちはだかっていることはわかるのですが、相手が追ってこなくなるまで離れた場所に行くか隠れるという行動しかとれず、この点は人によって恐怖よりも面倒くささが勝ってしまうかもしれません。

美しく儚い、高い完成度を持つ和風インディーホラー

本作はゲームをクリアするまで約4時間程度。4種類のマルチエンディングが用意されており、一部の行動や選択によって分岐します。
一ノ瀬にバスで辿り着いた後、屋敷に到着し、やがて打ち捨てられた家屋の奥を目指していくという本作の流れは、まるで湊自身が現代から過去に遡っていくかのようで、先の展開を早く見たいと思わされるものでした。両親や祖父母、深山家の因縁を湊が解いていった先には、いったい何が待ち受けているのか…それはみなさんの目で確かめてみてください。

筆者は『ウツロマユ』をはじめてプレイした時、何よりまず綺麗なゲームだと思いました。そしてその感覚が最後まで変わることがありませんでした。

本作はグロテスクな描写のあるホラー色の強い作品ですが、その奥には常に儚さと美しさが通底しています。そしてこの作品世界を構築するために、映像面の精細さやオブジェクトの配置など、ビジュアル面で徹底した作りこみをしていることが伝わってきました。これほど凝った、高いクオリティを持った作品が、たった二名(プログラマーのUTUTUYA氏とデザイナーのKOZUE氏)の製作スタジオから生み出されたことは驚くべきことでした。もし本作の情報を見て、少しでも惹かれるものがあったなら、きっと満足のいくものになっているに違いありません。

『ウツロマユ - Hollow Cocoon -』はPC(Steam)にて発売中。冒頭のノスタルジックな景色が味わえる体験版も用意されているので、ぜひチェックしてみてください。


PlayStation 5(CFI-2000A01)
¥66,980
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《林與五右衛門》

林與五右衛門

2023年4月よりゲームライターとしての活動を始めました。『Fable』や『シェンムー』といったゲームから影響を受けてNPCに強い関心を抱き、彼らがゲーム内でどう息づいているのか観察しています。演劇集団ゲッコーパレードのメンバーとしても活動中。

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