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女性が絶滅した世界で…『LISA: Definitive Edition』翻訳者インタビュー・いかに世界の終わりに生きる中年たちの陰鬱なRPGを日本語に落とし込んだか

ダークネスなインディーのRPG『LISA: Definitive Edition』が今年、発売されるにあたり、日本語翻訳を担当したMaki.M氏にインタビューを行いました。

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女性が絶滅した世界で…『LISA: Definitive Edition』翻訳者インタビュー・いかに世界の終わりに生きる中年たちの陰鬱なRPGを日本語に落とし込んだか
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ポストアポカリプスの荒野が広がり、女性が絶滅した世界にて中年男性が赤ん坊と旅するRPG『LISA:The painful』。ダークさとユーモアが混ざり合った本作が2014年にリリースされて以来、多くのプレイヤーから長いあいだ人気を博してきました。翌2015年には続編『LISA: the Joyful』もリリースされ、よりストーリーと世界観が掘り下げられています。

「LISA」シリーズの荒涼とした世界の手触りは多くのプレイヤーから支持を受け続け、今年、『LISA: Definitive Edition』が発売されるまでに至っています。本作は『LISA:The painful』と『LISA: the Joyful』をひとまとめにしたタイトルであり、あらためてあの世界に触れる機会を生み出しています。

今回の『LISA: Definitive Edition』のトピックスとして、「LISA」シリーズで初めての日本語翻訳が公式に実装されたことです。今回Game*Sparkでは、本作の国内版リリースに先駆け、今回日本語版の翻訳を行ったMaki.M氏の「いかにあの世界をローカライズしたか?」のお話を伺いました。

ブラックユーモアの裏にある悲しみを、取りこぼさないように翻訳した

――『LISA:The painful』という作品は2014年にリリースされており、いまでも人気を博しています。本作を初めてプレイしたとき、どんな風に感じましたか。

Maki.M氏:世界観や物語の運び方が、今まで見てきたどのゲームとも違う個性的な作品だなと感じました。良い作品は記憶に残る作品だと思いますが、本作も間違いなくそのひとつになると思います。

――今年リリースされる『LISA: Definitive Edition』の日本語翻訳の見どころを教えてください。

Maki.M氏:『LISA: The Painful』は世界にたったひとり残された女の子を拾って育てたブラッドの視点で、『LISA: The Joyful』はその唯一残された女の子、バディの視点で、物語が展開されます。

この2つの作品が両方収録された『LISA: Definitive Edition』をプレイすれば、片側からの視点だけでは見えてこないキャラクターたちの心情や、世界のあり方などを見ることができ、「LISA」シリーズの世界をより深く味わうことができるかと思います。また登場人物が皆、型にはまらないユーモア溢れるキャラクターばかりなので、それぞれの言動やセリフを楽しんでもらえたら嬉しいです。

――『LISA:The painful』はまるでアメリカのアンダーグラウンドコミックみたいな、シニカルなユーモアと、タイトルの通りの “痛ましさ”が描かれていると思います。そんな本作を日本語に翻訳するとき、特に注意したことを教えてください。

Maki.M氏:ブラックユーモアには悲しみが隠れていると思うので、特に主人公の口調や話す内容で、原文から読み取れる哀愁のようなものは取りこぼさないよう注意しました。また、世界に残された唯一の女の子バディと、その育ての親であるブラッドの間の関係には、家族とも友人とも言えない微妙な距離感があるように感じたので、そのあたりの気持ちのすれ違いのようなものを原文通りに伝えられるよう心掛けました。

――日本語翻訳の際に、開発のDingaling Productionsと話し合ったことなどはありますか。

Maki.M氏:既に資料が豊富にあったため、直接的に何か話し合いをしたということは特にありませんが、登場人物が多く、それぞれ個性的なで細かな設定もあったため、セリフを訳す際には各キャラクターの資料をよく参照しました。また会話が比較的多い作品なので、テンポよく読める文章になるよう既存の映像を参照しながら作業を進めました。

――『LISA:The painful』が長い間どうして人気を博しているのか、その理由について考えたことを教えてください。

Maki.M氏:「世界に残された唯一の女の子」という重いテーマと可愛らしい絵柄、それぞれ事情を抱えながらも力の抜けるような面白さのあるキャラクターたち、何より一見タフに見えて、実は過去の罪悪感に囚われている哀しい主人公など、そこかしこにある二面性やギャップが魅力だと思います。

また、強さ、正義、愛など、よくあるテーマに分かりやすい答えを用意していないところや、主人公自身が良くも悪くも完璧な存在ではなく、それでいてどこか憎めないところがあるのも、長く愛される理由かと思います。

――最後に日本のゲーマー向けに、『LISA: Definitive Edition』の魅力を教えてください。

Maki.M氏:世界に女の子がひとりしかいない世界で、不器用ながらもその女の子を守ろうとするブラッドと、自分以外は全員男という世界に生を受け、ブラッドの歪んでいるとも感じられる愛情や庇護欲をまともに受けて育ったバディ。『LISA: Definitive Edition』では、視点が変わればこんなにも世界が変わって見えるんだということを体感できます。

一見重い話に思えるかもしれませんが、独特のキャラクターたちやブラックユーモアのおかげで、明るいばかりでも、暗いばかりでもない不思議な雰囲気があります。疲れたときや、ちょっとクスッと笑いたいときにもおすすめできるゲームですが、物語を進めていくうちに、キャラクターの内面を探っているつもりが、逆に自分の価値観が曝け出されるような奥深さがあるところが魅力かと思います。


『LISA: The Definitive Edition』はPC/Mac/Linx(Steam)および海外PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/ニンテンドースイッチ向けに配信中。今回インタビューした日本語翻訳が実装された国内版は、Beep JapanよりPS5/PS4/ニンテンドースイッチにて年内のリリースを予定しています。

《葛西 祝》

ジャンル複合ライティング 葛西 祝

ビデオゲームを中核に、映画やアニメーション、現代美術や格闘技などなどを横断したテキストをさまざまなメディアで企画・執筆。Game*SparkやInsideでは、シリアスなインタビューからIQを捨てたようなバカ企画まで横断した記事を制作している。

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