『アサシン クリード オリジンズ』の「隠し部屋」はなかったけど「謎の空間」はあった!ピラミッド新発見の概要とゲーム表現との違いに迫る | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『アサシン クリード オリジンズ』の「隠し部屋」はなかったけど「謎の空間」はあった!ピラミッド新発見の概要とゲーム表現との違いに迫る

『アサクリ オリジンズ』でも丁寧に描写されていたピラミッドの謎はまだまだ解けそうにありません。

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『アサシン クリード オリジンズ』の「隠し部屋」はなかったけど「謎の空間」はあった!ピラミッド新発見の概要とゲーム表現との違いに迫る
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隠れし者やテンプル騎士団の皆々様におかれましては、ピラミッドの奥に隠し部屋があることはもはや常識ですが、この度考古学上の研究に於いて未知の空間の存在が実際に発見されましたと報じられました。

古代エジプトが舞台の『アサシン クリード オリジンズ(Assassin's Creed Origins)』では再現されたクフ王のピラミッドを探索することが可能であり、2017年発売直後の調査報告よりも前から隠し部屋を用意していたことがAUTOMATONなどでも報じられ当時話題になりました。今回の発見はその調査の成果となるもので、実に186年ぶりの大快挙として注目を集めています。

ハードコアゲーマーとしては、やはり『オリジンズ』との関連が気になるところ。ディスカバリーモードの説明を交えてざっくりまとめました。

『オリジンズ』に採用された「ウーダン説」とは

ピラミッド建設は昔の想像図だと奴隷の仕事であるように描かれていましたが、現在では国民を動員した正規の労働として行われたと判明しています。謎の1つが、1ブロック2.5トンの石材をどうやって引き上げるかです。スロープを作るのは当然として、どのような形のスロープになるかは、痕跡が残っていないために様々な仮説が出てきました。しかし、一直線にしろ巻き付け状にしろ、そのスロープを設置するのも膨大な資材がいるので決め手に欠けます。

そこに2007年、フランスの建築士ジャン・ピエール・ウーダン氏が「内部螺旋通路説」を提唱し物議を醸します。ウーダン氏の根拠となっているのが1986年に行われたフランス隊の物理学者ビュイ博士の調査で、重力計を使った調査でらせん状の空間があるとビュイ博士は主張。ウーダン氏はそれを元に、その空間を石材の引き上げに使ったという仮説を立てました。ピラミッド外側にスロープを作らず、石材を積みながら内側に通路を延ばしていき、角の部分に部屋を作って石材を方向転換させていたというものです。

ウーダン氏の仮説は建築士としての観点でしたが、考古学を無視した部分もかなり多く、内部通路説は考古学者からは否定されていました。2011年には見つかっていない部屋があると提唱していたことから、『オリジンズ』のチームはウーダン氏を考証に招き、氏の説をベースにした隠し通路を取り入れます。これはあくまでもフィクションであるからこそ、ロマンがある方を選択したのかもしれません(本社がフランスなのもあるでしょうが)。

ウーダン氏の仮説に基づき、ゲームでは王の間の脇から隠し部屋に入り、「ノーブルサーキット」と呼ぶ通路を通り、そこから螺旋通路を下ってピラミッドを出るルートになっています。

白黒付けよう!宇宙線を使ったピラミッド透視計画

仮説を実証するにしろ否定するにしろ、確かめてみないことにはどうにもなりません。そこで名古屋大学を含む共同プロジェクト「スキャンピラミッド」が実施されました。

ピラミッドの通路は建設後にわざわざ塞ぐ仕組みを使っていて、新しい場所を探すためには穴を開ける、つまり遺跡を傷つけないと進められません。確証がない状態でそれはできないので、「透視」で確認しようというものです。

地下探査などではダイナマイトなどを利用した地震探査もできますが遺跡には難しいので、新しい「ミューオン透視」という手法が使われました。これは宇宙から地球に降り注ぐ素粒子ミューオンを写真のように観測するもので、素粒子を対象にしたレントゲン写真のようなものです。名古屋大学の中村光廣教授が開発した素粒子用乾板を下側の女王の間に設置し、ピラミッド上部を通過するミューオンの観測を行いました。空間があるとミューオンの検出量が増えるため、透視するように浮かび上がるという仕組みです。

ミューオン透視の結果、ウーダン氏の提唱する螺旋回廊と隠し部屋は存在しませんでした。よって、『オリジンズ』にあるものが実証されたということではありません。逆にこの調査によって仮説は完全に否定されたのでお間違えないように。

想像豊かな仮説のロマンも「ありませんでした。以上」であっけなく否定されてしまうのはちょっと寂しいですが、一方で上り通路の大回廊上部に巨大な空間があることが判明しました。発表後に追加されたディスカバリーモードでもこの調査と未知の空間には言及されています。そのため、『オリジンズ』の表現及びウーダン氏の仮説とは関連がないところに未発見の空間があった、というのが正しいのです。

今回の隠し部屋など『オリジンズ』のエジプトは実際どうなのか、現地調査に当たっている名古屋大学の河江肖剰博士が、自身のYoutubeチャンネルで解説プレイを行っているので参考にしてください。

そして今回発表された空間というのは、2017年発表で注目された空間とはまた別のもの。女王の間のスキャンの前に、ピラミッドの入り口付近でもスキャンが行われており、その際には別の空間が通路の上にあるらしいということは判明していました。今回の調査では実際に壁に穴を開け、ファイバースコープを中に入れることでその存在を目視で確認。ミューオン透視が正しいことが改めて証明されたのです。そうなれば、大回廊上部の巨大な空間に調査の手が入るのは時間の問題でしょう。近いうちにもう一つの大発見が期待できそうですね。

現時点ではあくまでも「空間が見つかった」という段階で、それが考古学的にどのような意味を持つのかは研究の途上です。果たして定説は覆されるのか、それとも裏付けされるのか、今後の動きに注目です。


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