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リアルな16世紀を追求…し過ぎた?『大航海時代 Origin』まさかの“不評”スタートについて考える【特集】

3月7日にスマホとPC向けに配信された『大航海時代 Origin』。これは世界各地の気象データを取り入れたオープンワールドが売りのオンラインゲームで、まさに16世紀の海を航海しているかのようなリアルさ……という前評判でした。

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3月7日にスマホとPC向けに配信された『大航海時代 Origin』。これは世界各地の気象データを取り入れたオープンワールドが売りのオンラインゲームで、まさに16世紀の海を航海しているかのようなリアルさ……という前評判でした。

しかし筆者が3月7日午後10時20分の時点でSteamのストアを確認すると、全体的な評価は「やや不評」。178件のレビューのうち、好評は僅か23%に過ぎません。

ど、どうしたんだ『Origin』!? 予想外の低評価に、筆者も狼狽しています。本当はこのゲームについて「実在の航海士が書いた日記と照らし合わせながらレビューする」ということで、編集部と話がついていたのですが……。

ここは「なぜ『Origin』は不評なのか?」ということを、自分の目で確認しなければなりません。

スキップできない移動シーン

15世紀から16世紀にかけてのヨーロッパ諸国で、いち早く海洋進出を遂げたのはポルトガルとスペインです。

外洋航海向けの船が多く建造され、一攫千金を目指す航海士たちがこぞって海の向こうへ旅立ちました。しかし当然ながら、当時の船は今のそれとは違って木の箱をそのまま大きくしたような代物。嵐にでも遭遇すれば簡単に転覆し、さらにいつまでも陸地が見つからずに船員たちが食料不足に陥って餓死する……ということもよくありました。

この時代の地球は、まだまだ果てしない世界です。ロンドンからニューヨークまで飛行機に乗って移動できる21世紀とは「移動」にまつわる感覚が全く異なります。『Origin』はそれを本当によく再現している、ということは最初に書いておかなければなりません。

たとえば、スペインのセビリアからフランスのボルドーへ向かうとします。もちろん、移動手段は帆船です。このゲームには自動航海という機能があり、移動先が発見済みの都市であれば手動操舵を必要とせずそのまま船を動かすことができます。

ところが、自動航海だろうと手動航海だろうと移動自体はスキップ不可。帆船が悠々と進む姿を、ただただ黙って見ている時間が流れます。

試しにセビリアからボルドーまでの移動にかかる時間を測ってみました。帆船らしく、非常に優雅にマイペースに水を切ります。自動航海は最短距離を算出・設定してくれる機能ですが、それでも一切の操作を必要としない時間ばかりが漂います。

ようやくボルドーの港に到着した瞬間にストップウォッチを押すと、「09:54.02」と表示されていました。つまり、セビリアからボルドーまでは約10分の道程。な、長い!

船員の仕事は「待つこと」

あまりにもゆったりしているこの移動システムは、「移動中にゲームを終了しても船は目的地へ進み続ける」という機能も有しています。

しかし歴代『大航海時代』は、もちろんそこまで移動に時間を要するゲームではありません。特に『III』は、順風満帆の時には目にも止まらぬ速度で船が画面端へ突き抜けてしまうほどでした。

ま、まさか『Origin』は、こんなところに史実性を持ってきたのか……?

セビリアからボルドーまでがこの所要時間ですから、イベリア半島からヴェルデ岬以南のアフリカ、或いは大西洋を越えたアメリカ大陸へ行くには何十分かかるのでしょうか? このあたりも検証しようかと思いましたが、船団レベルが不足していてモロッコより南へ行くことはできませんでした(しかも、なかなか船団レベルが上がらない!)。

断言しますが、これは筆者のような16世紀マニアでないと耐えられません。

コロンブスやガマ、そしてマゼランも「いつまでも陸地が見つからない」という事態に遭遇しています。そしてその間、船員はやることがありません。もちろん帆を調整したり、甲板を磨いたり、釣りをしたり、砂時計をひっくり返したりということはしていましたが、基本的には狭い船の中でひたすらじっとしているのみ。

人間、身体を動かさないと精神面でも不調をきたします。それが積もり積もって反乱の原因になってしまうのです。

そうしたことを考慮すると、「目的地へ行くまでに長い時間がかかる」というのは極めて史実的です。もちろん、史実的なことが必ずしもスムーズなゲーム進行につながるとは限りませんが……。

筆者からの提案

ただし、それをもって『Origin』を「クソゲー」とか「失敗ゲー」と呼ぶのも正しくないと感じています。

気象や海域毎の風向き、地形は極めて忠実に再現している上、歴代『大航海時代』のBGMが実装されていたりします。なんとシリーズ最大の問題作『III』のBGMも! 筆者の大好きな地中海のテーマが流れた時は驚きましたよ、ええ。


それ以外にも『Origin』はところどころで『III』の遺伝子を継いでいます。地域毎に言語があり、ゲームを進めるには通訳をしてくれる航海士を雇う必要がある点は『III』そのもの。どこかで致命的な手抜きをしているわけではなく、むしろ丁寧かつ史実的に作り過ぎた点がゲーム進行に悪影響を与えてしまっている……と書くべきでしょうか。

ここで、筆者から『Origin』の開発陣に提案があります。このゲームは経済システムをもっと複雑にすれば、より面白くなるのではないでしょうか? 「交易品を安く買って高く売る」というだけではなく、各国毎の通貨という概念があれば両替もできるようになるはず。

史実ではヴェネツィア共和国が発行するドゥカートに対抗して、ポルトガルがクルザードという交易通貨を制定しました。これに金銀の産出量や各国の保有量も反映させ、その時々で相場が変わるという具合にします。そして、航海に出ている間は相場の変動が一切分からないという仕様にしたらどうでしょうか?

「航海に出ている間にドゥカートが大暴落していた」ということが発生すれば、長い待ち時間も苦ではなくなると思ってしまうのは筆者だけでしょうか?


いずれにせよ、このゲームは「リアルな16世紀」を体験できる内容に仕上がっています。『大航海時代 Origin』は3月7日より基本プレイ無料でリリース中。対応機種はPC(Steam)/iOS/Androidです。


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《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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