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『Horizon Zero Dawn』危機はもう目の前に!滅んだ世界を元に戻す過程を考える【ゲームで世界を観る#21】

いつの日か、未来の別の知的生命によって、私たちが“燃料”にされないように……。

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本記事は終盤の核心部分を含むネタバレを記述しています。
必ずクリアした上でお読みください。

ゼロドーン計画は生命が死に絶えた世界を一から作り直すという、言わば「地球の再テラフォーミング」です。機械によって地球上の有機体が全て食い尽くされた後、ノアの箱舟のように集めたDNAを下に動植物と人類文明を再構築することが目的でした。諸々のトラブルによって中途半端になった結果、アーロイが生きる1000年後の世界では機械生命と自然が共存する奇妙な生態系が生まれました。「滅亡」という言葉では生ぬるいような事態が起きたのですが、そこから実際どのように復元していったのでしょうか?

1:酸素を元の状態に戻す

生物は酸素がなければ生きていけないとは限りません。酸素は元々原始生命にとっては有毒で、「嫌気性生物」という微生物の部類は酸素がなくても生息していけます。身近なところでは動物の腸の中にいて、ガスを出したり食中毒を引き起こしたりしています。微生物レベルで生命を根絶させることは不可能に近く、燃料化した有機物を利用して嫌気性生物が繁殖していくでしょう。最悪クマムシだけでも生き延びると思います。たぶん。

機械の方も酸欠になれば燃焼効率が落ちて自滅するのではとも思いますが、それは別にして、酸素量を元に戻すためには「シアノバクテリア(藍藻)」を使う方法が有力です。シアノバクテリアは地球上で初めて酸素を生み出す光合成を始めた生物。アオコや赤潮、ストロマトライトなどを形成します。それ以前の地球には大気に酸素がほとんどなかったのですが、数億年の間に大気組成を変えて嫌気性生物を大量絶滅させる「大酸化イベント」が起こりました。酸素がなければオゾン層もできず、地上に降り注ぐ紫外線も素通りです。これと似たようなことを人為的に実行すれば酸素量を増やせるという理屈です。

もちろん一朝一夕にできるものではなく、あらゆる生物が消費する酸素、特に微生物が使う分を先に用意しておかなければ、すぐにまた酸素が枯渇してしまうでしょう。自然の増殖では到底追いつかないので、出来たとしても100年近くシアノバクテリアの生産をフル稼働でやっていたのではないでしょうか。それくらい大気の変化を起こすには気の遠くなる時間がかかるのです。

2:土を作る

大気組成を戻せたとして、復元した生物を放てば定着するかというとそうではありません。テキストデータを見ると最終的に岩しか残らない、と予想されており、おそらく生物だけでなく土の有機物まで消費するようになっていたのでしょう。「土」とは無機物の砂や粘土に生物の死骸や排泄物、バクテリア、菌類が良い具合に混ざり合って出来ているもので、有機物を残らず分解してしまうとただの砂に戻ってしまいます。

微生物を含む有機物が全くない状態の土地に生物を送り込むと何が起きるのか、それが観察できるのが火山で出来たばかりの「西之島」です。絶海の孤島、噴火の熱によって生物は死滅、厚く積もった火山灰で表面の土はなし。正真正銘「ゼロ」からのスタートですが、いずれは小笠原諸島のようなパラダイスになるのですから希望を捨ててはいけません。

現在はカツオドリがコロニーを築いているのですが、一つ興味深い現象が起きています。それは、死骸が腐敗せずにその場でミイラ化していることです。カツオドリに付着している微生物や虫によって分解し、土壌の基礎ができると予想されていましたが、あまりにも少なすぎたためにそのまま放置状態になってしまいました。自然界で死骸が分解されるには食物連鎖による捕食と消化活動が必須です。血肉となる、排泄物となることで連鎖の次の段階が使用できるように栄養素が加工されます。

そして、枯れた植物と動物の死骸を土になるまで加工するのが「虫」の存在です。中でもスカベンジャー、腐敗したところにうじゃうじゃ湧いてくるシロアリやコキプリ、ミミズなどが、見た目が悪くても循環に大きく寄与しているのは間違いありません。そのため、土壌を復活させるには漫画「テラフォーマーズ」のようにコケとGを最初に放つのが理にかなっています。植物の種子を蒔くのはその後ですね。

3:世界に拡散する

土を作るところまでは世界に配置された生産施設の中でも可能ですが、それを定着させるまで粘り強く地表へ蒔き続ける必要があります。その運び手になるのが哺乳類、は虫類、鳥類などの動物です。動物は栄養の蓄積、濃縮の役割と共に、植物の種子や虫を運ぶ、言わば新天地を目指して物資を積み込んだ船のようなものです。確実に成功するとは限らないものの、母体となった動物が死ねばその死骸の栄養素を利用して根付くかもしれません。前述のカツオドリのように簡単にはうまくいかないでしょうが、蓄積が続いていけばやがて小笠原諸島のように新しい生態系が構築されるでしょう。

ですが人類文明再興が最終目標であるゼロドーン計画ではそんな悠長なことはやっていられないので、ここでいよいよ機械獣の出番です。大型動物が安定して生息環境が整うまでは、集積と拡散の役割をロボットで代用する。ガイアによるコントロールによって、不足しているところへ効率よく蒔ける。そうすることで、自然の拡散を待つよりもずっと早く環境は改善されていく、という算段だったと想像できます。おそらくシェルウォーカーが大きな運搬作業を担っていたはずですが、あのコンテナを開けると虫がぎっしり詰まっていた、なんて光景もあったかもしれません。そしてガイアが健在であれば、機械獣を家畜化した全く別の文明もあり得たかと思うと、SF的想像力がますます活性化しますね。

本作で言及された地球の酸素量低下ですが、実は海の中ではすでに起こっていることなのです。人類による多量のCo2の排出、地球温暖化の影響によって深海に於ける酸素が減り、海洋生物が窒息しているというのです。酸欠状態になった「デッドゾーン」は年々広がっており、生態系の乱れも顕著に観測されています。地球史上では「海洋無酸素事変」が何度か起こっており、このときには生物の死骸が分解されずにそのまま堆積します。これがある一定の条件を満たすと化石燃料に変化し、現在の私たちはそれを採掘して利用しているというわけです。

本作では環境問題を意識して、特定のトロフィーを獲得したプレイヤー1人につき、アーロイが旅する西部に1本植樹を行うというキャンペーンを行っています。もし再び人類によって地球の酸素量が減れば、今の地球の生命は分解されない有機物として地層に残るでしょう。そしていつの日か、未来の別の知的生命によって、私たちは“燃料”にされてしまうかもしれませんよ。


《Skollfang》

好奇心と探究心 Skollfang

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