スマーフ/ブースティングは悪なのか?問われる『VALORANT』コミュニティのモラル【コラム】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

スマーフ/ブースティングは悪なのか?問われる『VALORANT』コミュニティのモラル【コラム】

スマーフ/ブースティングとは一体なにか、ライアットゲームズはどう捉えているのか、そして『VALORANT』コミュニティに今問われるモラルとは。

ゲーム文化 eスポーツ
スマーフ/ブースティングは悪なのか?問われる『VALORANT』コミュニティのモラル【コラム】
スマーフ/ブースティングは悪なのか?問われる『VALORANT』コミュニティのモラル【コラム】 全 3 枚 拡大写真

9月29日、タクティカルFPS『VALORANT』を運営するライアットゲームズは、「ゲームの公平性を損なうプレイについて」という文書を公式Twitterを通じて公開した。これは連日トレンドを賑わせている、一部のストリーマーらによる公平性を損なうゲームプレイに対する同社の見解と対応を示したものだ。

事の発端は、とある『VALORANT』プレイヤーがTwitterに投稿した1枚のスクリーンショット。そこには、バーチャルe-Sportsプロジェクト「ぶいすぽっ!」所属メンバーの八雲べにさん、プロゲーミングチーム「Crazy Raccoon」に所属するストリーマー、RionさんとZepherさん、Franciscoさん、同チームオーナーであるおじじ氏と対戦していたことが示されていた。画像によると、八雲べにさんがプラチナ2、おじじ氏がプラチナ1、その他の3名がランクなしという扱いになっている。

これにより、「Crazy Raccoon」所属ストリーマー3名のスマーフ行為、ならびに5名へのブースティング疑惑が浮上。Crazy Raccoonを運営するSamurai工房とぶいすぽ運営がそれぞれ調査を行い、声明を発表した。この結果、各人に減給や一定期間の大会出場停止、『VALORANT』の全アカウント削除といったペナルティが課せられることとなった。

この一連の出来事から、他ストリーマーやプロ活動を行う選手のソーシャルメディアや配信を通した発言にも注目が集まり、件の5名以外にも処分や調査が行われる事態に発展している。


そもそもスマーフ/ブースティングとは

トレンドにあがり続けた言葉の意味を今一度おさらいしたい。前提として、『VALORANT』のマッチングシステムは、同じ実力を持ったプレイヤー同士がマッチングするように、つまり競技の公平性を保つことを目指して組まれている。そして、スマーフ/ブースティングはこのシステムを欺くものである。なお、この考え方はFPSタイトルだけでなく、競技性を持つ対戦ゲームのほとんどに当てはまるものであることは留意頂きたい。

まず、競技性を持つ対戦ゲームにおいて「スマーフ(スマーフィング)」とは「メインアカウントよりもランクの低い別アカウントでプレイすること」を意味する。FPSなどの対戦ゲームにおける「初心者狩り」の一つであり、システム側に自らを初心者(=レートの低いプレイヤー)と偽ってマッチングすることによって、自分よりも弱い相手と意図的に対戦する行為のことだ。今回の場合はRionさんとZepherさん、Franciscoさんがこれに該当する。

そして、「ブースティング」には複数の方法があるが、今回は「アカウントのレートを、第三者の高レートを用いて不当に上げる」行為を意味する。一般的に「下げラン」などと呼ばれる行為が該当し、本来同じレート帯に相見えないはずであるレートの高い人間がゲームを支配し勝利することで、それよりも低いレートにあるパーティメンバーのレートを不正に上げるというものだ。今回の場合であれば「RionさんとZepherさん、Franciscoさん(=第三者の高レート)が、八雲べにさんとおじじ氏のレートを不当に上げた」ということになる。

なお、今回のような場合だけでなく、金銭などの対価を支払って第三者にアカウントを操作させ、レートを高くする行為も、ブースティングの一例として挙げることができる。また、対戦タイトル以外で、レアアイテムの入手代行やレベルアップといった行為も同様だ。ビジネスとして行うブースティングは特に悪質性が高いとされ、韓国では法律で禁じられており、最大2000万ウォン以下の罰金または2年以下の懲役が科される。


開発者のスマーフに対する考え

次に、ライアットゲームズの見解と考え方を整理する。2020年10月に公開された開発者コメントの中で、シニアプロデューサーであるIan Fielding氏は、「スマーフは許せないもの」としたうえで、本作のコンペティティブモードでプレイヤーがレート帯と大きくかけ離れた活躍を見せた場合はそれを検出し、素早くレートを上げることで本来の実力に見合ったレート帯へ押し上げる内部システムを実装していると説明した。

また、2021年5月に公開された開発者コメントでは、スマーフの現状に関する調査を行っていることを示した。この中で、「スマーフの大半は悪意によるものではなく、ランクの離れたフレンドとランク戦をプレイしようとしているのだということが分かっています。」と、悪意のないプレイヤーが持つ動機への一定の理解を示しつつ、対策のカギは「悪意のないプレイヤーがスマーフをしなくても済むように、VALORANTのプレイ環境を整えること」にあるとしている。そして、悪意のあるプレイヤーに対しては厳しい処分を科していくつもりであることを説明し、スマーフを重要課題と捉え、大量のリソースを投入していることを強調した。

ライアットゲームズの回答

今一度、今回ライアットゲームズが公開した声明を読んでみよう。

・サブアカウントを利用しコンペティティブモードのプレイを通じて第三者のランクを上げる行為

・本来のランクやゲームスキルにそぐわないサブアカウントを利用しているプレイヤーと一緒にコンペティティブモードをプレイしてランクを上げる行為


ライアットゲームズはこれらの行為に対し、「意図的に競技の公平性を損なうプレイに該当する行為は明確に弊社のサービス規約に違反するものではないものの、不適切であり、推奨しない」という考えを示した。これらの行為は『VALORANT』が目指す“公平性”とはかけ離れたものであり、引き続きプレイヤーの協力を求めるといった姿勢だ。

一連の騒動を受け、読者の皆さんはどのような考えを持っただろうか。

コミュニティに問われるモラル

ここからは筆者の所感や私見を述べたい。スマーフとブースティングは悪質なものである。幸いにも『VALORANT』は多くのプレイ人口をかかえたビッグタイトルであるが故、公平性を保つことが可能なゲームである。この公平性とは一体なにか、例えば3年前に発売された格闘ゲームを購入し、オンライン対戦に臨んだとしても、あなたは勝利できないだろう。そこには同じ実力を持ったプレイヤーがいないからだ。そしてあなたは、そのゲームを継続して遊ぶだろうか。答えは否だ。

それと同じで、今流行のFPSをプレイしてみたとする。期待に溢れたチュートリアルを終え、緊張しながらランクマッチキューに入る。すると対戦相手には自分と同じ実力と認識された、メインアカウントでは最高レートの実力を持つプレイヤーがいるわけだ。とりわけ1人の責任が重い5v5のタクティカルシューターにおいて、大きな実力差は試合を破壊しかねない。そのような相手と対戦することは、本当の初心者へマイナス要素を与えるのではないだろうか。

筆者自身、スマーフ/ブースティングと思われるプレイヤーに出会った経験は何度もある。システム上それが許されていたタイトルをプレイしていたこともある。何度もコントローラーと机とデバイスを殴りつけながらも、周りの友人の助けもあって、何年にもわたってFPSをプレイすることができている。だが、このような仕打ちに耐えうる人間は一握りしかいないことを、そして、それらが受ける必要のない洗礼であったことを忘れてはならない。公平性は、想像よりも多くのユーザーによって成り立ち、支えられているのだ。

今『VALORANT』が盛り上がっているのは、決して上位層だけで成り立っているものではない。その下で粛々と日々の生活に『VALORANT』を添えている多くのプレイヤーもいるのだ。そして、『VALORANT』を向こう何年も続いていくようなゲームにしたいとは思わないだろうか。理想を唱えることに意味があると信じて述べるが、ゲームの終焉をネガティブなものにしないためにも、一人ひとりが行動規範に則ったプレイヤーであるべきであると考えている。

《Okano》

Okano

「最高の妥協点で会おう」 Okano

東京在住ゲームメディアライター。プレイレポート・レビュー・コラム・イベント取材・インタビューなどを中心に、コンソールゲーム・PCゲーム・eスポーツについて書きます。好きなモノは『MGS2』と『BF3』と「Official髭男dism」。嫌いなものは湿気とマッチングアプリ。

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]

特集