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帰ってきたコーヒーショップADV、客のトラブルはSNS社会への警鐘を鳴らす?『コーヒートーク エピソード2: ハイビスカス&バタフライ』日本語デモ版先行体験レポート

多様性を描いたインドネシア産のアドベンチャーゲーム『コーヒートーク』まさかの続編、その日本語デモ版のインプレッションをお届けします。

連載・特集 プレイレポート
帰ってきたコーヒーショップADV、客のトラブルはSNS社会への警鐘を鳴らす?『コーヒートーク エピソード2: ハイビスカス&バタフライ』日本語デモ版先行体験レポート
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2020年1月にリリースされたアドベンチャーゲーム『コーヒートーク(Coffee Talk)』。コーヒーショップのバリスタとなって、常連と話に花を咲かせたり、初めてやってくるお客さんの身の上話を聞いたりしながら物語を読み進める作品でした。特徴的なのはやってくるお客さんの求めるドリンクを、プレイヤーが選んだ材料でブレンドして提供すること、それによって話が変わる点です。

架空の2020年のシアトルを舞台とした同作では、登場する人物たちはエルフや吸血鬼、そのうえ宇宙人にまでおよび、異種族間の恋愛などさまざまなトピックスを楽しめました。トピックスの中には作品世界の法律などをテーマに政治的な内容も含まれており、現実との対称性があり考えさせられるところも含め、筆者は同作を弊メディアのレビューで高く評価しています。

そんな『コーヒートーク』になんと新エピソードが登場することが発表されました。2022年リリース予定の『コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ』は前作から3年後の2023年が舞台となっており、主人公や登場人物の一部はそのまま地続きになっています。今回は「BitSummit THE 8th BIT」に合わせ、日本語デモ版の先行プレイをする機会が得られたので、そのインプレッションを読者のみなさまにお届けします。

始まりは雷雨とともに。夜が更けてくせ者のお客様が登場

恒例となったモノローグのイントロダクション。前作は異種族ひしめく多様性の社会がシアトルにあるという導入でした。

今作の始まりは雷雨に見舞われているコーヒーショップから。そこにやってきたのは前作から引き続き登場する「ジョルジ巡査」。雷雨のため店内の灯りもおぼつかない状態です。ジョルジ巡査は“緑髪の妖精さん”はいないのかと話しかけてきてファンを喜ばせてくれます。

緑髪の妖精さんとは前作の主要人物「フレイヤ」のことで、第1作目では店にやってきたお客さんのお話をフレイヤが聞いて小説の種にする、というストーリー上の主要目的を与えてくれる人物でした。なお、フレイヤは少なくとも開始時点では「新作小説の準備でリサーチ旅行に行っている」とのこと。

フレイヤのインスタみたいなSNSでの1枚

次いで1杯入れるシーケンスとなり、今作で初登場となる新しい紅茶「ハイビスカス」と、タイでは「アンチャン」と呼ばれている「バタフライピー」のどちらかを提供する流れになります。

筆者はハイビスカスティーをいれたところ、ジョルジ巡査は「酸っぱいけど懐かしい味」がするとのコメント。主人公のバリスタいわく、本来ならアイスで砂糖を入れて飲むと……ならアイスで入れてあげてよ!そのあたりの調整は本作品では効かないようです。 なおショウガやシナモンを入れて飲むと薬膳になるそう。

次いでやってきたのは「ルーカス」と名乗る、めちゃくちゃ明るくて軽い人物。オーダーを聞けば、彼は以前エスプレッソをがぶ飲みしていたそうですが、いきなり胃が受け付けなくなったそうで、最近はラテなんかを頼んでいるといいます。とはいえたまにコーヒーが恋しくなるようで、主人公に意見を求めてくる形に。コーヒーのなにが恋しくなるかというと「カフェイン」と語るルーカス。主人公は抹茶を提案しますが「もっとこうガツンとくるもんじゃない?」という手厳しい感想を漏らされました。

そのまま身の上話に移ると、どうやら彼は現実でいう「インフルエンサー」のようなことをしている人物で、自身を「ライフスタイルの評論家」と称します。ホットな人や場所を取り上げて写真SNSや動画で紹介して回っているそう。初対面であるジョルジ巡査に「おやっさんて呼んでいい?」などと非常にノリが軽いです。

そうこうしているうちに今度は店が停電。バリスタが裏に回って電気の復旧をしている間に「バンシー種族」の女性がやってきます。「疲れた心に効くような喉にいい一杯」をくれないかという彼女のため、バタフライピーのラテを提供することになります。ここでは、ラテアートを書くことができます。ここまでの3名に振る舞った内容はゲームにおける飲料提供のチュートリアルを大まかに兼ねているともいえるでしょう。

ネット民の正当性を疑うバンシー女性

バタフライピーのラテ

まだまだ雨は止まず。「タイヤのバルブキャップを外して回っている人間がいる」という、足止め中のジョルジ巡査は運悪くその被害に遭ってしまったそうです。明日から捜査をするらしく、本エピソードにおける今後の伏線にもなっているのかもしれません。

そこでルーカスが「イタズラ動画はネットで大人気なんだ」と不穏な発言をします。視聴者は手っ取り早くどきどきできるし、動画主はPVを稼いで広告収入を得られる、けれどそのうちマンネリになってやり過ぎてしまい、大炎上して一瞬ですべてを失ってネットから姿を消す――だけどすぐに次の人間が現れる、カメラがついた携帯とWi-Fiさえあれば誰にでもできるから――と。

ジョルジ巡査は「参入しやすい上に高リターンな仕事ってわけか」と漏らしますが、ルーカスは新しいことに挑戦したくてお休み中だと返します。今日はよくても明日はごみ扱いされるかもしれない、毎日がジレンマとの戦いで、なぜならこの仕事は視聴者の気分次第ともいえるからと。

その話を黙って聞いていたバンシー女性は「なぜ視聴者が正しいといえるの? なぜ視聴者の望むことをそこまで重視するの?」とルーカスに聞きます。さらには「なぜ彼らの気まぐれに付き合うの?」とすら問います。ルーカスは「最後は数になってくる、1人だけの意見ならどうとでもできる、だけど何万人とか何百万人もの視聴者に納得してもらうのは簡単じゃないから、長いものには巻かれているんだ」といい、中からゆっくりと状況を変えようとしていると返します。

しかしバンシー女性にとってネットの世界はあまり好きになれないものであったようで、ネット民の振る舞いは(オブラートに包んだ表現に変えますが)“嫌い”とのこと。彼女は、2年前、自分のレジュメに書けるからと、オペラのソプラノ役のオーディションにそなえて歌っている動画をアップロードしたことがあった、と語り始めます。

その後、「動画のコメント欄をしっかり管理した方がいい」と連絡をしてきたオーディションの審査員の1人に従い、コメント欄をちゃんと見てみると、そこは“厳しい意見”であふれていたのだと――実際はそんな生やさしいものではなく、トキシックな感じで。バンシーに対する種族差別のコメントすらあったといいます。

その話を聞き「「権利擁護法」が施行されてもまだそんなクソコメを残すやつがいんのか?」(原文ママ)と呆れるルーカス。「権利擁護法」は亜人にも心があり人権があるということ認めた国際法だといいます。ヤギの耳を持つ「サテュロス」であるルーカスも、最近まで権利擁護法の対象ではなかったそう。「主要六種族」の特徴から遠ざかれば遠ざかるほど審査が終わるのも遅い。他方、バンシーは数がすごく少ない、だから理解者も少ない。

そこで「わかった、お姉さんがネットを嫌うわけが。そこまで冷静に話せるのは立派だよ」とルーカスが理解を示します。一瞬、一件落着……とも思えますが、しかし、むしろここからがこのデモでのお話の議論の本番。

バンシー女性は「私のどこが冷静だっていうの、あれだけの侮辱をあれだけ容赦なく浴びせられたら、冷静でなんていられるわけがない」と怒り、取り乱します。「視聴者は常に正しい」なんて聞きたくないと。

ルーカスの暴走アドバイスが波乱を呼ぶ展開

ルーカスは「だけどきみにはチャンスがあるよ」といいます。ぶっちゃけストーリーが大切なんだ。きみにはそれがある。なにしろ「セイレーンが大半を占めるソプラノ歌手を目指しているバンシー」ってのがポイントなんだ、と。そして「俺が手を貸そうか」と、彼女の種族を、逆に衆目を集めるためのポイントにするアピール戦略を提言します。

しかし、「私の生まれとかは関係なく、実力でチャンスをつかみたい」と拒絶するバンシー女性。ルーカスは「お膳立てをしようって話だよ」と返します。それでも「私はあなたを知らないし、あなたも私を知らない」と態度を頑なにする彼女に、ルーカスは「お姉さんの努力が少しでも実を結んでいたなら、とっくに名前を尋ねていたって思わない?」と爆弾発言をして場は凍り付くことに……。

そしてバンシー女性が帰ろうとするときに、ようやくバリスタが名を尋ねると、バンシー女性の名が「リオナ」というのがわかります。リオナは最後に「あなたの話ってほとんど私に向けられてる気がしなかった」とルーカスにいい去ります。

含みを持たせた導入は今後の展開が読めなくて期待大

完全に巻き込まれのジョルジ巡査が気の毒

そうこうしてお客さんは全員帰ったのですが、バリスタが見つけたのは忘れ物のジッポ。果たしてコレは誰のものだったのだろうか、微かな謎と波乱の予感を残しつつ、デモは終了となります。

前作と今作を比較すると、前作は導入部で明確にストーリー上の目的があったのがわかりやすい違いでしょう。フレイヤがコーヒーショップにあらわれる客の話からインスピレーションを得て小説を作る、という部分が一つの縦軸として早々に提示されていました。

しかし今作の導入は上述の流れで、前作で“馴染みの店”になった人向けにペーシングされている印象を受けます。第1作目は店を訪れる多数の人物たちのそれぞれ持つ一口サイズの短編が、連続ドラマのように続くような作品で、クリアするとまるで受け取り方が変わるようなしかけもありました。一方、今作は導入部だけをみると、ひょっとしたら長編小説のようなシナリオ構造なのかもしれない、そう感じさせてくれました。

そうなるとそもそもどのようなところが主題となるのかが気になるところですが、イントロダクションのモノローグがネット社会を照射するようなものであることを考えると、このプロローグは作品全体を覆うテーマとなっているのかもしれません。すなわちSNSやインフルエンサー、ネットを通じた成功と失敗、そういったことに踏み込むシナリオが待っている予感がします。何はともあれ「どうやって続編を作るんだ」と思わせるような展開だった第1作目を鑑みれば、世界設定をさらに深める方向に舵を切るかもしれないプロローグに度肝を抜かれたのは確かです。

たった3人の登場人物で激論を交わし、プレイヤーを驚かせるこのデモ版のプレイ体験は、本編を必ず購入しようと決心させる作りになっていました。前作の登場人物はどう絡んでくるのか? ルーカスの今後は? リオナはどうなっていくのか? ほんの息抜きの香り立つコーヒーではなく、興奮を呼ぶカフェイン強めなプロローグのプレイだけで、前作のプレイヤーはマストバイだと思わされました。

この夜はちょっと眠れそうにない、そんなコーヒーを求める方にも今からオススメしたくなる体験です。拙稿ではありましたが読者のみなさまも興味を持たれましたらウィッシュリストに入れてみてはどうでしょうか。それでは次は本作のレビューやインプレッションでも紙面を通じてお目にかかればと思います。未プレイの方は今からでも第1作目はやる価値があります。レッツ・エンジョイプレイ!

『コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ』

Steamストアページ: https://store.steampowered.com/app/1663220/

《SHINJI-coo-K(池田伸次)》

FPSとADVを偏愛しつつネトゲにも造詣のあるフリーライター SHINJI-coo-K(池田伸次)

「Game*Spark」誌に寄稿しつつも「IGN JAPAN」誌と「GAMERS ZONE」誌にも寄稿。「インサイド」誌にも寄稿歴あり。今はなき「Alienware Zone」誌や「週刊Steam」誌にも寄稿していたフリーライター。 そしてヒップホップビートメイカー業も営む音楽家兼ゲームライターの兼業家。通称シンジ。

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