厚労省が「ゲーム依存症対策関係者連絡会議」を開催ー資料「中高生のネット依存の疑い93万人」に疑問呈する声も | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

ハードコアゲーマーのためのWebメディア

厚労省が「ゲーム依存症対策関係者連絡会議」を開催ー資料「中高生のネット依存の疑い93万人」に疑問呈する声も

厚生労働省は「ゲーム依存症対策関係者連絡会議」を開催しました。資料では、2017年時点でのネット依存にある中高生の人数が93万人であることなどが伝えられていますが、その内容には疑問点も。

ニュース ゲーム業界
(c) Getty Images
  • (c) Getty Images
  • (C)Getty
※ UPDATE(2020/2/6 20:32):記事掲載時、「ゲーム依存の可能性の中高生が93万人」と記載を行っておりましたが、正しくは“ネット依存”の誤りでした。お詫びし訂正いたします。
なお、見出しの変更にあわせて、本文も一部追記・修正しています。コメント欄でのご指摘ありがとうございました。

(c) Getty Images

厚生労働省は、2月6日午前10時30分より「ゲーム依存症対策関係者連絡会議」を開催しました。

同会議は、精神疾患の1つとして取り上げられることとなった「ゲーム依存症」対策を目的としたもの。公開されている資料によれば、行政機関からは厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長の橋本泰宏氏や経済産業省商務情報政策局コンテンツ産業課課長の高木美香氏らが、関係団体からは依存症対策全国センター長(国立病院機構久里浜医療センター院長)の樋口進氏や一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会理事の松田洋祐氏らが出席していることが明らかになっています。

同会議内で使用予定のスライドでは「中学・高校生のネット依存が疑われる者の割合の変化」などとして、2017年時点でのネット依存の可能性の中高生の人数が93万人であることや、その水準が国際的にも高いことなどが指摘・示唆。なお、スライドの後半ではネット・ゲームを共にして取り扱っている部分が多く見られます。

ただし、国際カジノ研究所の所長である木曽崇氏はこれらの情報に対して問題点があることを指摘。このスライドに使用されている久里浜医療センターによる全国調査が社会的実体と乖離しているという見方を示しています。氏の指摘の詳細は下記の通りです。

今回、久里浜医療センターが行ったゲーム依存(正確にはゲーム障害)に関する全国調査には以下のような大きな問題があります。

1) 今回、久里浜医療センターが発表する「中高生のうち93万人が…」とされる数字はあくまで「依存が『疑われる』人」を抽出する為のスクリーニングテストによるものです。今回厚労省から事前公布されている樋口氏のプレゼン資料を見ると、その調査手法(抽出手法)としてyoungによるスクリーニング手法を使っていますが、当該調査手法は数あるスクリーニングの手法の中で最も「疑いのある者」を広範に抽出するものとして知られており、その中から実際に医師の診断の受けて「依存(障害)である」と判断される人はごく一部です。要は、同センターが発表する93万人という数字の中には「本当は依存ではない者」が大量に含まれており、社会的実体と乖離し過ぎている為、本来はこういった社会的傾向示す数字として利用されるのにはそぐわないものです。(本来は「医師の診断」とセットで医療的な目的をもって使われるもの)

2)次に挙げられる問題は、この数字をその他の国で行われた調査結果と比較することの是非です。今回厚労省から事前公布されている樋口氏のプレゼン資料を見ると、彼らが行ったスクリーニング調査の結果を各国でこれまで行われた調査と比較するような資料が存在します。しかし、世の中には異なる複数のゲーム依存の疑いをスクリーニングする調査手法が存在しており、前出のとおり彼らが利用したYoungによる調査手法は、他の手法と比べて常に「大きく」数字が出てしまう手法です。この様に異なる調査手法で算出された「疑いのある人」の数や比率を、諸外国で行われたその他の調査結果と単純比較しその数値の高/低を論ずること自体があってはならないことです。

また、同氏はこれらの数字や資料が過剰なニュースになる可能性を伝えており、各報道機関内に対し注意を促しています。香川県のゲーム依存症条例を皮切りに盛り上がる国内ゲーム規制論ですが、果たして同会議の結果は国内世論や各種規制にどのような影響を及ぼすのでしょうか。なお、WHOの「ゲーム依存症」認定に際しては安易に誤診が引き起こされる可能性が指摘されており、少なくとも日本においては世界に先駆けその傾向が見られてしまったのかも知れません。

同会議に関する全資料や概要はこちらから確認可能です。
《吉河卓人》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

ニュース アクセスランキング

  1. Epic GamesストアにおけるPCゲーム無料配布の今週分は日本対象外―4月5日はSFRPG『アウター・ワールド』&アクションADV『Thief』予定

    Epic GamesストアにおけるPCゲーム無料配布の今週分は日本対象外―4月5日はSFRPG『アウター・ワールド』&アクションADV『Thief』予定

  2. “ゲーム中毒になったから”訴訟します!…米で相次ぐ訴訟に大手ゲーム会社反論「憲法に違反する」

    “ゲーム中毒になったから”訴訟します!…米で相次ぐ訴訟に大手ゲーム会社反論「憲法に違反する」

  3. 3分の2近くの人員を投入し『ウィッチャー』新作開発が本格化か?CD PROJEKT REDの2024年度人員配置が明らかに

    3分の2近くの人員を投入し『ウィッチャー』新作開発が本格化か?CD PROJEKT REDの2024年度人員配置が明らかに

  4. 『AC6』や『Ghostwire: Tokyo』が3,499円、スイッチの新品ソフトも2,999円! PS4は2,000円以下も豊作─ゲオ オンラインの新セール対象をチェック

  5. 2023年ゲーム賞を席巻した『バルダーズ・ゲート3』が3,828円!『スーパーマリオRPG』『テイルズ オブ アライズ』もお買い得なゲオ店舗セールを現地調査

  6. 『Hellgate』またもや復活!?ハクスラシューター『Hellgate: Redemption』発表―「やり残したこと」を生みの親自身による清算へ

  7. 『Risk of Rain 2』や『Vampire Survivors』などの開発が参加する謎のプロジェクト「iii initiative」が進行中―29日午前3時に新情報公開

  8. 賞金稼ぎRPGシリーズ最新作『メタルサーガ ~叛逆ノ狼火~』最新プロモーション映像公開!音楽はベイシスケイプの工藤吉三氏が全楽曲担当

  9. 『ライフ イズ ストレンジ』などで知られるDON'T NODが「RPG」「ナラティブADV」「アクションADV」に特化した3つの部門を新設

  10. ニンテンドースイッチ後継機2025年3月発売へ―日本経済新聞が報じる

アクセスランキングをもっと見る

page top