2017年3月23日に、インターグローより発売されるPS4向け農業経営シミュレーターゲーム『ファーミングシミュレーター17』。Game*Spark編集部は、リアルな農業を再現している本作をもっと深く理解するために、北海道で酪農・農業機械の輸入販売を行っているコーンズ・エージー本社を訪問し、専門家に話を訊きました。前回の記事では、日本や欧米における「大規模農業」の今に迫りましたが、本稿では、ある意味ゲームの主役とも言える、トラクターをはじめとした農業機械について、コーンズ・エージーが取り扱っている製品を中心に、その特徴や魅力を解説してもらいました。
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■トラクターは最先端技術の塊だった!
前回に引き続き、コーンズ・エージー取締役農機環境部長の橋場恭太氏が、農機の保管されている会社の敷地を案内してくれました。広大な敷地内にはさまざまな大型機械が並んでおり、その光景は圧巻の一言。海外からコンテナで運ばれ、目の前で組み立てられていく大きな機械を目の前にすると、童心に戻ったようにワクワクさせられます。
最新のトラクターは自動車並みの快適さが追求されており、搭乗者が疲れにくい構造が追求されているのだと橋場氏は説明。また、各メーカーはデザインにも力を入れており、ドイツファール(DEUTZ-FAHR)やランボルギーニ(Lamborghini)などは、デロリアン・DMC-12をはじめとした多くの先進的デザインのスポーツカーや高速鉄道をデザインしてきたイタリアの工業デザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロ氏が設立したイタルデザインによりトラクターのデザインが手掛けられています。
運転席はハイテクの塊。アームレストのタッチモニターとカラー液晶パネルが2つ搭載されており、トラクターの動作設定や、状態を確認できるようになっています。広い畑になるほど精密な作業が必要になるため、GPSを活用してどこまでを作業したかといった情報も把握できるといいます。その他にも、エアコン、車載オーディオ、ペットボトルを冷やすためのクーラー、搭乗者がいかに快適に作業できるかが追求されています。倒すとランチ用のテーブルになる補助席も付いていますが、国内の法律では公道での2人乗りはできないのだそう。運転するためには大型特殊免許が必要となりますが、車両自体は新小型特殊となるので、最高速度も制限されてしまいます。
やはり構造としては自動車に近いですが、ブレーキペダルが2つ装備されています。これは、片側だけ踏むとスピンターンのような動作が可能となり、畑での小回りが利くようになるためです。マニュアルミッションとCVT(無段変速機)が選択できますが、国内ではCTV車よりも価格が安くなるマニュアルミッション車が圧倒的に多いのだと橋場氏は説明してくれました。
こちらはゲームに登場する「7シリーズ」より1回り小さい「6シリーズ」。「9シリーズ」より2回りほど小さい。
■ドイツファールとランボルギーニのトラクター、実は同じものだった?
今やスーパーカーで知られるランボルギーニですが、もとはトラクターメーカーでした。現在では、車を扱っているランボルギーニとトラクターのランボルギーニは別の会社となってしまいましたが、代表的なチャージング・ブルのエンブレムは健在です。
そして驚くことに、ドイツファールのトラクターとランボルギーニのトラクターは同じトラクターなのだと橋場氏は説明します。昔は違う会社であった両社ですが、合併を繰り返して現在は同じ親会社の傘下となり、共通のプラットフォームで製造されているためです。差異はボディのデザインやソフトウェアなど一部しかありません。ゲームに登場するニューホランド社(NEW HOLLAND)のトラクターもケース(CASE)と同じプラットフォームであるとのこと。
広大な土地が多い北海道では、大型の輸入農機が大半なのだと橋場氏。他の府県の農家にとってはあまりなじみがないとされる輸入農機ですが、北海道の農家であれば『ファーミングシミュレーター17』に登場する農機は見慣れたものも少なくないのだそうです。
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2回にわたってお届けした、専門家による知られざる農業と農機の特集。『ファーミングシミュレーター17』で表現されている農業の世界は遠い海外の話ではなく、日本国内でも行われている身近なものであることが分かりました。また、最新鋭の技術が詰まったトラクターや農機は、メカ好きの心をもくすぐりそうです。
魅力的な農業機械を体験できる『ファーミングシミュレーター17』は、PlayStation 4を対象に、2017年3月23日発売予定です。