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【コラム】『FF15』の終わりなき旅―歪な世界の多重リアル構造【ネタバレ注意】

本記事には『ファイナルファンタジーXV』のエンディングに言及したネタバレが含まれています。具体的な言及は避けていますが、ゲームをクリアしていない方は閲覧・取り扱いに注意してください。

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■新たな世代のための新たな礎

物語は傍においやられ、無限の拡張性と並行してキャラクターは強くなり、手段や目的がはっきりしない永遠の現在が続いていく――これを体現しているRPGの一群があります。そう、「ソーシャルゲーム」です。RPGを冠した多くのソーシャルゲームは、終わらないことを前提に、いつまでもゲーム内の物語とは別に、現在が延々と続いていきます。そして、あちらの世界よりはむしろ、こちらの時間に依る更新が行われていきます。「MMORPG」も近いものがありますが、プレイヤーキャラクターの取り扱いにおいてスタンドアロン型に近いのは、ソーシャルゲームの方だと思います。

本作は「新たな世代のための新たな礎」を掲げています。

新たな世代のRPGとなるためには、旧い世代の「物語の終わり=ゲームの終わり」というRPGとは異なる、永遠の現在性を持った作品となることが必要でした。もはや物語は目的ではなく育成は手段ではない。物語を楽しむためでなく、キャラを育てたり仲間と交流するためにRPGをプレイすること。これが新たな世代のためのRPGだといえるのではないでしょうか。

そして新たな“礎”となるために、複雑な世界観や専門用語を排し、徹底してシンプルな物語構造とすることが必要でした。RPGの典型ともいえるビルドゥングスロマンをベースに「帝国と王国の争いの中、王子は王となり神の力を借りて世界を救う」という分かりやすい物語をつくること。物語はあくまで土台であり、けっして前面化しないように自重すること。

わたしが『FFXV』をプレイして思い出したのは、学生時代にファミレスで友達と延々と喋り続ける光景でした。意味も目的もなく終わることも予見されていないまったりとした光景。

その光景をノクティスたちと重ね合わせながら、わたしは15章において、「ふわとろ親子丼」の材料を大量に調達し、それを食べるためにキャンプをし、強い武器を求めてダンジョンに潜っていきました。もう世界の平和は確定しており、そんなことやらなくてもいいのに、です。


■なんだかよく分からんがすごいかもしれない

わたしはここまで、本作のリアルは「現代的な舞台」「現実感のある地平」「永遠の現在性」の3つである、と書いてきました。そして、その光景をファミレスの風景と重ね合わせていました。

日本のRPGの最大の強みは、設定の統一感を無視したいわばファミレスのようなものです。SFにしろハイファンタジーにしろポストアポカリプスにしろ、重厚で統一感のある世界観をもとにした優れたRPGは、海外にいくつもあります。それはまるで一流の専門レストランです。一方で日本のRPGは、さばの味噌煮とマルゲリータとプリンアラモードが同居する、まさにファミレスのような世界観です。

『FFXV』においても、どうみても日本にしか見えない街の風景が、どう見ても日本人には見えない人間の国のもので、その国の人間たちがアメリカの田舎のような風景で黒塗りの高級車を乗り回す様は、多国籍料理では片付けられない異様な世界観です。これに違和感を覚えない方がおかしい。


もちろんプレイ時間を積み重ねるほどに慣れていき、違和感は希薄になっていきます。わたしたちがファミレスのメニューに違和感を覚えないのは、慣れ親しんだ味であり、既視感にあふれているからです。『FFXV』では現代的な風景と空想的なオブジェクトをどちらも「リアル(精彩)」に描くことで、プレイヤーに強烈な違和感を与えてくれました。

「リアル」と「ファンタジー」の融合を掲げている本作ですが、わたしはむしろ十分に融合していないからこそ違和感があり、それが本作のパワーの源になっているのだと考えます。融合がうまくいきすぎると、それはなんのフックにもなりえないからです。まるでホストのようだ、と揶揄された主人公たちは、大量生産されて既視感のもとに受け入れられる「ザ・主人公キャラ」からの脱却に必要な違和感でした。

異様さや違和感こそ、日本のRPGが先に進むために必要なものです。わたしは以前「JRPG」という言葉は「西洋によって後進性、不変性、奇矯性、官能性といった性質を付与され類型化された“異質な”日本のRPG」とのことだと書きました。海外のRPGの模倣ではなく、JRPGらしい異質さを抱えたまま、後進性や不変性を振り切って前に進むこと、その覚悟をわたしは『FFXV』から感じました。


異様な世界観に振り回された結果、ノクティスたちのソウルフードは実はおにぎりであり、親子丼が好きなのも納得だとか、リヴァイアサンとの戦いがまるで『ドラゴンボールZ』のようだとか、バハムートがダンクーガにそっくりだとか、武器召喚ってキャンプ用品にも応用できるのとか、レガリアがガソリン車じゃなくEVだったら風情がないとか、わけの分からない感慨にふけってしまうのです。

類型化を阻む「なんだかよく分からんがすごいかもしれない」存在であること。私は確かに『FFXV』にその可能性を感じました。

開発期間を主な原因とする問題は山積しており、けっして手放しで称賛はできません。しかしそれでもわたしは、現代もSFもファンタジーも、これまでのFFも全部飲み込んで、JRPGでも西洋のRPGでもない、新しいRPGが生まれた――それほどの感動を覚えたのです。「全てのFFを架空にする」のもとになった、あの名キャッチコピーを、今こそ高らかに宣言してもいいとさえ、思ったのです。



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