【特集】丸山ゴンザレスに直撃!『ゴーストリコン ワイルドランズ』で描かれる舞台と麻薬組織のリアル | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

【特集】丸山ゴンザレスに直撃!『ゴーストリコン ワイルドランズ』で描かれる舞台と麻薬組織のリアル

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【特集】丸山ゴンザレスに直撃!『ゴーストリコン ワイルドランズ』で描かれる舞台と麻薬組織のリアル
【特集】丸山ゴンザレスに直撃!『ゴーストリコン ワイルドランズ』で描かれる舞台と麻薬組織のリアル 全 12 枚 拡大写真

ボリビアの麻薬紛争地域を舞台にした重厚なシナリオが描かれるユービーアイソフトの新作タイトル『ゴーストリコン ワイルドランズ』。実写ドキュメンタリー映像など歴史背景を辿る展開が印象的な今作ですが、Game*Spark編集部は海外で活躍する日本人ジャーナリストの丸山ゴンザレス氏にインタビューを実施。アジアやアフリカ、南米などを中心に数々の危険地帯を渡り歩いてきた同氏に、『ゴーストリコン ワイルドランズ』の背景となる舞台設定やゲーム内要素について、実体験に基づく濃厚なお話を伺いました。


    丸山ゴンザレス
    1977年、宮城県生まれ。ジャーナリスト・編集者。國學院大學大学院修了。無職、日雇い労働などからの出版社勤務を経て独立。
    国内外の裏社会や危険地帯の取材を続ける。著書には『アジア「罰当たり」旅行 改訂版』(サイズ社) ほか多数。
    人気番組「クレイジージャーニー」(TBSテレビ系)に危険地帯ジャーナリストとして出演中。

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――海外の危険地域でさまざまな取材を行っていらっしゃいますが、そういった活動を行うようになったきっかけについて教えてください。丸山さんの「初めての危険地域取材」についてもお聞かせください。

丸山ゴンザレス氏(以下、丸山氏): 大義名分があったり何かを解決したいわけではなく、バックパッカーとしての体験の延長で始めたんですよね。そんな軽い理由かよ、と思われるかもしれませんが、そんなこんなで20年くらいやってます。今はちゃんとした理由もありますけど。「初めての取材」として明確に行ったのは、とある週刊誌の仕事。南アフリカワールドカップ開幕直前のヨハネスブルグのルポですね。

――既に日本国内向けにも多数のトレイラー映像が出ていますが、『ゴーストリコン ワイルドランズ』に興味は湧きましたか。

丸山氏: ゲームはほとんど遊びませんが、映像的な意味では興味が湧きました。トレイラー映像はカッコいい作りだな~と。

――丸山さんにとって、こういった映像からリアルな作り込みを感じることはありますか。

丸山氏: (ニュース番組風の演出を指し)海外ニュースの配色がそっくりですよね。ある意味、アメリカの人は好きそうだなって思ったり。


――実際にボリビアに足を運ばれたことはありますか。

丸山氏: ボリビアには行ったことはないんですよね。今現在のボリビアという国には個人的に興味がなかったというか。今の麻薬戦争の中でも、変わった位置づけなんですよ。それが逆に面白いところではあるのですが、いち旅行者ではなく取材として行く意味が個人的にはなくて。(観光地の)ウユニ塩湖を見て終わり、というわけにはいきませんし(笑)。

構造的に中南米を把握していれば、ボリビアという国がどんな位置付けになっているかは分かるんですよ。今の麻薬カルテルって単独ではなく、中南米とアメリカまで連動しているんです。その流れを把握していれば、「ここ(ボリビア)は麻薬の生産拠点として決まっている」ということが分かります。


カルテルというのは集合体で、トップの合議制で動くのですが、その中心がメキシコ。そしてそのメキシコに材料や製造したものを渡すポジションにあるのが、ボリビアです。それは1970年代から確定している情勢です。今のボリビア大統領は先住民出身で、コカ栽培の合法化に踏み切った人なんです。なので、ますます動きようがないところですね。

――ここ数年で目立った動きはない、という感じですか。

丸山氏: まあそうですね。勢力が入り乱れたりということはありますけど。

――丸山さんが実際に訪れたことがある、ボリビアに近しい情勢の地域はどこですか。そういった場所の治安や居心地についても聞かせてください。

丸山氏: 僕が注目していた場所としてはメキシコやジャマイカなどですね。メキシコの治安については、良いですよ。誤解されがちですけど、いわゆる「ドンパチ」は突発的に起きるものなので、強盗とかと変わらない事件です。チンピラはともかくとして相手が「麻薬カルテル」みたいな存在になると、現地に行っても(その存在は)分からないと思います。彼らは顔出し名前出しもありませんから。現地の人であれば、「あそこのご隠居さん、昔ヤクザだったらしいよ」みたいな感覚で「あの人、麻薬カルテルの一員らしいよ」といったことはありますが、彼らの秘匿性はとても高いです。そして、カルテルが支配しているエリアっていうのは、むしろある意味では治安がいいです。カルテルの支配力によって街の治安は変わります。

――メキシコやジャマイカに訪れた際、丸山さんにとって特に印象的に感じられた日本との違いはどういったところでしたか。

丸山氏: 危険性で言えば、ある意味では日本と変わらないですよ。悪い人達がたくさんいるところに行けば、違和感というより、「悪い人達が考えることはだいたい一緒だな」と感じるかなと。脅し方や商売の場所、交渉のタイミングなんかも、日本人の悪い人達と似ているなと思いました。

――『ゴーストリコン ワイルドランズ』の作中では「サンタ・ブランカ」という架空の麻薬カルテルが登場しますが、この組織にモデルはあるのでしょうか。


丸山氏: (本作のオープニングムービーを見ながら)この映像に出てきているのは、ほぼほぼメキシコの麻薬カルテルをモデルにしてますよね。見せしめの処刑なんかも、メキシコから始まっていますし。実際の舞台となったボリビア、ペルー、コロンビアあたりの話で言うと、「サンタ・ブランカ」の厳密なモデルは存在しないんじゃないかなと思いました。ただ、形としては「メデジン・カルテル」(*1)に似てるな、とは感じました。支配力という意味では。

(敵が装備している武器などを見ながら)「軍事力を持っている麻薬カルテル」という描写の元ネタは、たぶん「ロス・セタス」というメキシコ麻薬組織です。そこって元メキシコ陸軍特殊部隊のアルトゥーロ・グスマン・デセナ大尉という人間が「天下り」したところで、そのときについでに同僚と部下30人くらい引き連れて行ったんです。ついでに武器も……それこそ対空ミサイルにアパッチみたいな攻撃用ヘリなんかも持ち込んでいるんですよね。それがモデルになってるかなと思いました。

――作中で「カトリック教会を破門された新興宗教の神父」というキャラクターが登場するのですが、ボリビアや類似地域の間で「宗教と麻薬カルテルの癒着」といった実例はあるのでしょうか。

「サンタ・ブランカ」の布教部隊を率いているのがエル・カルデナル

丸山氏: 宗教とは密接に関わりにくいですね。基本的に信心深い人たちなので「日曜日は襲撃しない」ということもあります。日曜日は「家族で教会に行く日」なので。僕もメキシコ取材中に、家族連れで礼拝に来てるカルテルのメンバーを見たことがあります。思い当たる範囲で言うと、メキシコのミチョアカン州で活動していた「テンプル騎士団」という組織。そこは宗教ベースで、新興宗教的な側面もありましたね。活動を続けるうちに宗教色は薄くなりましたが。

――ボリビアにはどれくらいの規模の麻薬農家があり、麻薬はどれだけ身近な存在になっているのでしょうか。

丸山氏: 統計情報で国が出しているとは思いますけど(*2)、大統領が「先住民の文化を大事にする」という指針を持っていることもあるので、栽培が広く認められているんですよね。鉱山労働者なんかの疲労やストレス緩和のためにコカが必要になったり。日本人にとっての「お米」みたいに、ソウルフードに近いところがあります。精製してドラッグにしなければいいでしょ、みたいな感じで、ローマ法王級の有名人にコカ入りのお茶を出したりして話題になっていましたからね。精製してなければハイにならないですし。とにかくすごい量は生産してますよ。

――なるほど、先ほど仰っていたとおり、生産拠点ですね。


丸山氏: ジャマイカにとってのマリファナ然りですね。その国民の心に根ざす文化、考え方、アイデンティティーなんかと結びつくと、法律で取り締まるのは難しいです。ジャマイカでも厳密にはマリファナは違法ですからね。警察の前で商売をしているとさすがに捕まります。

――生産した麻薬を生産国内だけで使う、ということはあまりないのでしょうか。

丸山氏: 麻薬を作ってる国ってだいたい自分らで使ってないことが多いです。メキシコの人から「俺たちはアメリカ人の大学生がハイになるために麻薬を作ってるんだ」と言われたことすらあります。売り飛ばして金になるからやってるところが大きいです。儲かるからやってるだけで、ジャンキーだからやってるわけではないですね。

――『ゴーストリコン ワイルドランズ』に登場する「対麻薬カルテル組織」、ゲーム内で言う「ゴースト」という集団は実際に存在するのでしょうか。ちなみに、作中では「命令に沿って動くのではなく、自らの判断により、困難な任務の解決を目指す」という設定で描かれています。

丸山氏:聞いたことはないです(笑)。ただ、元ネタは想像できますね。民間軍事会社(Private Military Company/PMC)がベースになっていそうです。これは悪役みたいになっちゃってあまり良くない例ですが、チェチェン独立紛争のときに活動していたチェチェン軍部隊の一部が近いと思います。彼らは自分たちの考えで動いてます。善し悪しを別にすれば、そういった設定に近いところはあると言えます。あとはグルカ兵とかも。

僕の知ってる限りの「傭兵」ってインテリとは違うんですよね。「戦争行きたい!」みたいなこと言うやつってヘンな人多いですから(笑)。日本人の知り合いで、暴走族やっていた人が「一番気合入った職業」としてフランス外国人部隊を選んで実際に入っちゃったという話があります。たしかにフランス語ペラペラになって日本に帰ってきましたけど、某繁華街でキャッチのバイトをしてたんですよ。たまたま会ったときに、「次の仕事まで時間空いちゃったんで友達の手伝いしてるんですよ~」なんて言ってて。傭兵の私生活ってそういう例もあるので「自己判断でカッコよく動く」というような映画的イメージより、流される人も多いんじゃないかなと。

――例えばですが、日本に在住している人間が「ゴースト」のような対麻薬組織に入ることは可能なのでしょうか。

丸山氏:入るには「感情のまま素直に行動できる人ぐらいがいい」のかもしれません(笑)。体格なんかも、訓練で勝手に良くなりますからね。ちなみに、民間軍事会社みたいなところでは自衛隊上がりが多いらしいですよ。体力も渡航資金も持っていますし。でも命を懸けてる割に、金銭的には報われていないみたいですけどね。

――先ほど少し触れられていましたが、対麻薬組織や麻薬カルテルが扱う装備について教えてください。ゲーム内に登場する武器などは、どこまでリアルに描かれているのかも。


丸山氏: 実際、軍や対麻薬組織のほうは大したものは使ってないと思いますよ。装備が規定で決められていますからね。逆にカルテルのほうがピカピカで新品の武器だったり。僕が麻薬戦争を取材したときに言われたのは、「麻薬カルテルかどうか見極めるときは武器を見る。ピカピカの新品を持っているのは麻薬カルテルの連中だけ」ということ。お金をかけてデコレーションしたり、銃にダイヤモンドをあしらうやつなんかもいます。

――作中でドローンを飛ばして敵地を偵察する、というシステムがあるのですが、実際にはどのように扱われているのでしょうか。

丸山氏: ドローンって今はほとんど軍事利用されてますね。一時期アメリカとメキシコの国境でドローンを使った密輸が流行ったことがあるんですけど、とんでもない量を載せたから落っこちてバレちゃった、という話もあったり。過積載はさすがにバカだろ!って思いましたけど(笑)。今は無人偵察機が世界中で広く使われています。アフガニスタン国境地帯に「トライバルエリア」と呼ばれる、どこの国の支配も受けていないエリアがあって、麻薬や武器取引に使われているんですけど、普通の旅行用の飛行機で「そろそろトライバルエリアの上空かな?」と思って下を見ると、すごい量の無人偵察機が飛んでいたりして。今はそういう時代ですよね。虫サイズのドローンすらありますし。

――ゲーム内のミッションで「捕虜を拷問して情報を引き出す夫婦を倒す」というものがあるのですが、モデルはあるのでしょうか。

丸山氏: 噂でしかないですけど、メキシコの拷問がひどくなったのはとある中央アメリカの国から来た人達が理由という話があります。その頃から明らかに常軌を逸しているんですよね。メキシコ麻薬戦争がコロンビアで盛んだった時代は、今聞くような冗談みたいな残忍さは無かったんですよ。ナイフを使わず石で指をすり潰す拷問とか。

――強烈な話ですね……。ところで、この画面はプレイヤーと敵対する麻薬カルテルの組織図のようなものなのですが、丸山さんから見て何かお気付きになられた点はありますか。


丸山氏: 近い表現ではあるんですけど、麻薬カルテルって「ボス」は存在しないんですよね。連合組織なので、有力者数名によって動かされることが多いです。その中でカリスマ的な統率力を持つ人が「ボス」とされることはありますが、基本的に一人がいなくなったところで代わりは出てくる。「アタマ」を潰しても動き続けるんです。壊滅されそうになっても、また新たなグループが生まれるようになっていますね。

生産部隊の責任者とか、その辺は分かりやすいですね。密輸部隊がありますが、彼ら麻薬カルテルにとっては密輸部分がメインです。特にアメリカに輸出するという点では、そこが最大の難所ですし、基本的なところです。プロパガンダ部隊ですが、メンバーの集め方なんかは、いわゆるスカウトなどではなく、人の紹介などで入るらしいですけどね。下部組織のチンピラから上がってくることもあるけど、プロパガンダらしい行為はあまり聞かないです。(前述のとおり)秘密結社的な側面もあるので。

――実際にゲームに触れられて、マップの作り込みからリアリティーを感じられましたか。


丸山氏: 現実もまさにこんな感じですね。実際、街なんかはもうちょっと汚いですが……あとは街灯もないです。道の轍もリアルですね。麻薬カルテルの検問は、ゲームに出てくるほどしっかりしていないですが、存在しますね。自分たちのシマから麻薬が持ち出されないように見張っています。


服装については……いや~怖いなぁと思いますね。報復対象にされないように顔を隠すのとかね。ジャマイカで覆面用のマスクをもらったことがあるんですが、それもやっぱりガイコツ柄なんですよね(笑)。(上記画像左から二番目)反乱軍の服装とか、本当にいそうです。ジャージ着たりしていて。

――ゲームはあまりプレイされないとのことですが、海外ドラマはご覧になりますか。昨今では「ナルコス」や「ブレイキング・バッド」のように、麻薬を巡る事件を描く作品が流行の兆しにあります。

丸山氏: 「ブレバ」は特にないですけど「ナルコス」は番宣番組に出たりしてます。中南米系の麻薬カルテルものの解説役は、ここ最近でよく依頼されるようになりました。内容に関しては「リアル過ぎて良いのかなぁ……」って思います。単純に「悪い人の話」って面白いところあるじゃないですか(笑)。現実がウソみたいだから。ゲームのシナリオで「組織のボスを刑務所から脱獄させるためにトンネルを2km掘る」なんて話考えたら「バカじゃねえか!」って思うじゃないですか。でもこれ実話なんですよ。

――今作のリアリティーラインについても伺いたいと思っていたのですが、丸山さんの話を聞くと、現実のほうがフィクションらしく感じられてしまいますね。

丸山氏: 現実のほうがマンガっぽいところもありますね。個人的にツボだったのは、「カルテルランド」というノンフィクション映画の舞台のメキシコに行ったら意外と作品が不評で、「ボーダーライン」のほうが面白いって。「ブレイキング・バッド」も良いよね!って言うんです。お前らにとっては現実の話だろ!って思うんですが、現地の人もああいうドラマやハリウッド映画的なものが好きだったりするんですよね。

――本日はありがとうございました。



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麻薬カルテルや麻薬戦争、ボリビア周辺国から見る『ゴーストリコン ワイルドランズ』の舞台や設定を中心に、様々な「現実」を語ってくれた丸山ゴンザレス氏。ジャーナリストとして危険な地域に赴き続ける同氏ですが、その経験をもとに、本作にリンクする実情を話して頂くことで、舞台背景のみならず本作のキャラクターのバックボーンや、なぜこのような文化が残るのか、といった側面も感じ取ることができるインタビューとなりました。

『ゴーストリコン ワイルドランズ』はPC/PS4/Xbox Oneにて3月9日より発売。南米を舞台にした「危険」かつ「リアル」な旅路をぜひ味わってみてください。

*1. メデジン・カルテル=コロンビア・メデジンの犯罪組織。メデジンは2013年「Innovative City of the Year(今年の最も革新的な都市コンテスト)で1位に輝く側面も持つ」(WSJ報道

*2. 2011年世界で3番目のコカ生産量(CIA調べ

《Game*Spark》

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