10年前の「ひらめき」が原点―『フォーオナー』産みの親ジェイソン・ヴァンデンバーグが語る | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

10年前の「ひらめき」が原点―『フォーオナー』産みの親ジェイソン・ヴァンデンバーグが語る

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10年前の「ひらめき」が原点―『フォーオナー』産みの親ジェイソン・ヴァンデンバーグが語る
10年前の「ひらめき」が原点―『フォーオナー』産みの親ジェイソン・ヴァンデンバーグが語る 全 8 枚 拡大写真

Ubisoftより2017年2月16日に発売される、PS4/Xbox One/PC向け剣戟アクションゲーム『フォーオナー(For Honor)』。新規IPである本作は、侍、ヴァイキング、ナイトという時代も場所も異なる3つの勢力が一堂に会する魅力的な世界設定を備えています。Game*Spark編集部では、本作のクリエイティブディレクターであるジェイソン・ヴァンデンバーグ氏(Jason Vandenberghe)にインタビューを敢行。発売が迫った『フォーオナー』の開発経緯やこだわり、今後の展開まで、詳しい話を訊いてきました。

※本記事にはシングルキャンペーンモードの情報が一部含まれます。ネタバレの可能性もあるのでご注意ください。

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――ヴァンデンバーグさんには一昨年のE3でも取材させていただきましたが、あらためて自己紹介をお願いします。

ジェイソン・ヴァンデンバーグ(以下ヴァンデンバーグ): 『フォーオナー』のクリエイティブディレクターを務めているジェイソン・ヴァンデンバーグです。Ubisoftでは10年ほど働いていて、『フォーオナー』に関しては開発の初期から5年ほど携わっています。

――ヴァンデンバーグさんが過去に携わったゲームタイトルは?

ヴァンデンバーグ: ユービーアイソフトのなかでは、『ファークライ3』のナラティブディレクターのほか、『ゴーストリコン フューチャーソルジャー』や『レッドスティール2』にも携わっています。ゲーム業界には20年ほどいて、過去にはActivisionやエレクトロニック・アーツでも働いていました。

――以前のインタビューで、本作の構想が12年前からあるとおっしゃっていましたが、原点となるアイデアはいつ、どのように生まれたのでしょうか?

ヴァンデンバーグ: 最初は、ロングソード・ファイティングを用いた習い事をやっているときです。道場からの帰り道、(ロングソード・ファイティングにある)いくつかの構えをゲームの中に取り込めないか、とハッと思いつきました。そこから10年間、剣の構えをコントローラーの操作で表現しようと、何度も作り直し、今の形に落ち着いたのが原点です。


――本作には侍、ナイト、ヴァイキングが登場しますが、これ以外の勢力も候補にありましたか?

ヴァンデンバーグ: これ以外の勢力は考えていませんでした。彼らは、歴史上に名を残した、異なる価値を持つ勢力です。ナイトは弱き民のために戦って、守ろうとするために力を行使する人たち、ヴァイキングはアグレッシブで情熱のある人たち、そして侍は技巧や自己犠牲を象徴する人たちです。別の勢力を考えた時に、他にはないもの、特徴的なものを持つ勢力はこれ以外に思いつきませんでした。

――本作の発表から、アルファ含むオンラインテストが複数回実施されましたが、プレイヤーから寄せられたフィードバックの中で最も多かったことは何ですか?

ヴァンデンバーグ: フィードバックをたくさんいただいて、中には驚くものもありました。我々は最初、本作のゲームシステムが、ユーザーにとって難しいものだと考えていました。難しい技や最も高いレベルにたどり着くのは4日間ほどかかり、アルファの最終段階で全部遊べるだろう、という想定で作っていたのですが、ユーザーはたった一晩で最高レベルまで行ってしまい、そんな簡単に出来てしまうのだと驚きました。つまり、ユーザーにとってわかりやすかったんだろうと思います。フィードバックで最も多かったのは、バランスについてです。最も多かったのは、大蛇(オロチ)が強すぎる、というフィードバックなのですが、実際にパラメーター上で見てみると、そうでもなかった。もしかしたら、大きな刀を持った侍が来たら、畏怖感を感じるから強く見えたのかもしれない、と個人的に感じました。いろいろなフィードバックをもらって、要望に答えていきたいですね。

――本作のシステムは「アート・オブ・バトル」と言われていますが、開発のどの段階から採用されることになりましたか?

ヴァンデンバーグ: 最初に着手したのはマルチプレイで、4対4の対戦ができるという部分を作ろうとしました。というのも、そこが最も難しいと考えていたからで、それをシングルプレイに落とし込むのは簡単ですが、逆は難しい。そこで最初に「アート・オブ・バトル」を作り、練り込んで、マルチプレイができるようになってから、シングルプレイを付け足していこうとしました。初期の段階では200以上のプロトタイプを1年以上にわたって作り、形になってきたところで世界観とストーリーを構築していく、という手順をとっていきました。


――『フォーオナー』でe-Sports展開などは視野にありますか?

ヴァンデンバーグ: e-Sportsに関しては、ユーザーが決めることなので我々が決めることではありません。もちろん、e-Sportsの競技としてプレイできるようには作っています。バランスもいいですし、偏ったシステムでもありませんから、競争力のあるゲームになるとは思っていますが、その前にゲームをリリースするのが我々のミッションだったのでそれを優先しました。ただ、ユーザーのフィードバックや反応が良く、e-Sportsになるというのであればその準備はできています。

――本作のマルチプレイは、4vs4、2vs2、1vs1の形式となっていますが、対戦人数をこれ以上増やす計画は?

ヴァンデンバーグ: プロトタイプを作った時に試したことはありますが、人数が多すぎると混乱してしまうし、私としては、戦士に愛着を持ってもらったり、少人数の戦いに集中してほしいという考えがありました。確かに6vs6や8vs8というのは、集団戦の新たな楽しみ方がありますが、誰と戦っているのか、という感覚が薄れてしまいます。4vs4程度であれば、自分の敵は4人いて、最初は誰だかわからないけど、徐々に自分と戦っている敵プレイヤーの存在を認識していくのを感じてほしかったので、これ以上は増やしませんでした。

――では、使用できる12人(3つの勢力に4人ずつ)のキャラクターはベストな人数ですか?

ヴァンデンバーグ: 12という番号は、一番力強い数字です。キャラクターがたくさんいると、どのキャラクターがなにをできるのか調べるのが大変ですよね。もっとキャラクターを好きになってほしいですし、もっと集中してほしいのでそんなに多くはしませんでした。逆に選択肢が少なすぎると、好きなキャラクターがいないということもありえるので、12という数字はスタートとしては良かったと思います。プレイされないキャラクターもいないでしょうし、キャラクターのことを深く知れますからね。リリース時はこれでいいと思いますが、これからフィードバックを見ながら、ユーザーが人数を少ないと感じるなら、足す方向で考えます。ただ、減らすのは難しいですが。種類を増やすのか、技を増やすのかはフィードバックを聞いてから考えたいので12は良い数字だと思います。


――ストーリーモードに話を移します。本作には敵の砦に攻め入ったり、物資を奪ったり、馬に乗ったり、というバリエーションがありましたが、特に注目してほしい部分は?

ヴァンデンバーグ: まず、本作のコンセプトは、3つの勢力が1つの場所で戦うというところにあるので、なぜそこで戦っているのか、という答えがストーリーにあると思っています。したがって、なぜこうなったのか、どうやってここで生き、なにがトリガーになったのか、というプロットの分からない部分を穴埋めしてくれるのがストーリーモードです。また、マルチプレイヤーは、ゲーム内時系列でいうと後の方になります。その前になにが起こったのか、なぜマルチプレイヤーモードがこうなっているのかをストーリーモードで説明してくれます。

――本作のストーリーはてっきりアポリヨンを倒す話だと思っていたのですが、ナイトのミッションを遊んだとき、プレイヤーと普通に話していたので驚きました。ストーリーのエンディングは最初から決まっていたのですか?

ヴァンデンバーグ: 先に言ってしまうと、ストーリーのエンディングが最初ではありません。最後を決めてからストーリーを作ったのではなく、3つの勢力にアポリヨンがどのように関わっていくのかが語られているストーリーなので、各章でアポリヨンがこれらの勢力に対してなにをしたのかが描かれます。ストーリーを進めていくうちに各勢力の人物や組織図、関係性の変化が少しずつ明らかになっていくのです。そうするとストーリー内で各勢力が際立って、とてもスペシャルになります。私がストーリーを書いていたとき、アポリヨンが生き生きと1人で歩くようになりました。彼女は理由があってこんなことをしており、この戦争に関わっている理由もストーリーで描かれます。エンディングについては、私の腹の底にある闇から生まれました(笑)。ストーリーを執筆中、物語を確認してディスカッションしていたのですが、あるときチームの1人が私のデスクに来て、「これはあなた自身を投影しているんですか? 闇が深いですね」と話したほどです。それくらいアポリオンが生き生きしてきて、ある意味私と共鳴するところがあります。

――オンラインでのCo-opプレイは実装されていますが、オフラインでの2画面分割プレイが廃止されたと聞いています。その理由は?

ヴァンデンバーグ: 単純に言えば、時間とリソースの問題です。こういった判断は、どのようなスタジオでも起こりうることで、自分の子どものように作ってきたゲームであっても、そういった判断を下すのは、とても痛々しいことです。どちらかを切り落とすのはとても痛みを伴ったのですが、作品を発売するためにはやらなくてはいけませんでした。


――本作の世界設定では、ナイトが住む地域だけ作物が育つという話をお聞きしたのですが、こういった設定を作るうえで苦労した点はありましたか

ヴァンデンバーグ: 実際はナイトの土地だけ、というわけではありません。確かにトレイラーにもあったように物を奪い合ったりもしましたが、これは過去の話で、今は多少良くなっています。作物も少しは育ちますし、各勢力も砦を作れるようになりました。ただ、すべての物が満たされる程度ではないくらいです。戦争のきっかけは物の奪い合いですが、この戦いが長い間続いていくうち、多少世の中が良くなって物も増えてくると、人々はなぜ戦争が起こったのかを忘れ始めました。ただ嫌いだから戦っているものの、理由がわからないから戦争をやめてみようか、と考える人も出始めて、そこでアポリヨンが登場する、というストーリーです。私は『フォーオナー』に限らず、ゲームのストーリーや世界設定を構想してきましたが、それは大変な作業です。チャレンジではあるものの、同時に私にとって楽しいことでもあります。ただ、一番苦労したのは、侍を本作の中でどのように位置付けるかということです。今の日本と、『フォーオナー』中の侍の位置付けは似ていて、遠いところから長い距離を移動して、彼らがどのようにして異文化に入っていくのか。侍には殿様がいてヒエラルキーがあり、ヴァイキングには首領がいて、ナイトにはナイトの価値観がある。それを本作の中に持ってくるときにどうやって説明しようか、といったところが一番苦労しました。

――ところで、ヴァンデンバーグさんがロングソード・ファイティング以外で習っていた武術・武器はありましたか?

ヴァンデンバーグ: 6歳くらいのころから剣を使った戦闘に興味があって、いろいろな武器を学びました。上手いわけではありませんが、好きだったから色々習って、『フォーオナー』を作ることになった時、実際に武器に詳しい知人たちにアドバイザーとして参加してもらい、再現度を追求していきました。もちろん、詳しい人間が周りにいないものに関しては、専門家を連れてきてゲームに意見を取り入れています。

――それでは最後に、日本のゲーマーにメッセージをお願いします。

ヴァンデンバーグ: まずは、皆さんが本作を気に入ってくれることを祈っています。まだ発売前なので少し緊張していますが、我々の成し遂げた仕事が皆さんに気に入ってもらえるよう、期待しているのと同時に、今作で描いた侍の存在が、日本の皆さんにとって不快なものではないように願っています。ファンタジーなので史実とは違いますが、多くの人が納得できるような形で仕事ができたと思っているので、ぜひ楽しんでください。戦場で会いましょう!

――ヴァンデンバーグさん、本日はありがとうございました。

《秋夏》

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